トラック輸送からモーダルシフト化へ

船井総研ロジ

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前回の記事「第52回モーダルシフトの有効性」でについて記述しました。

今回は、物流業界の喫緊の課題である、人材不足や長時間・長距離運転による過労運転などの労務面やCo2削減効果があり環境面での対策にもなり得る、モーダルシフトの中でも鉄道輸送について、お話したいと思います。

鉄道輸送を含めたモーダルシフトの考えは1980年代からすでに存在しており、国も1991年からその取り組みに着手しています。

2001年に閣議決定された地球温暖化問題への対応の施策としてモーダルシフト化率を平成22年度までに50%を超える水準とすると掲げられておりましたが、モーダルシフト化率が45%を超えることはなく減少傾向を示しました。

現在も国土交通省は促進に取り組んでおり、2020年までに、34億トンキロ分の貨物を自動車から鉄道・船舶輸送に転換することを目標にしております。

環境保全の観点からは日本政府として、2013年比、2030年で26%のCo2の削減を目指しています。

鉄道輸送の大きなメリットとしては、

1.一度で大量の輸送が可能

鉄道輸送であれば、10tトラック65台分(650t)もの荷物を、輸送することが出来ます。

配送網としては全国にネットワークが組まれており、全国どこへでも輸送できます。

そのうえ長距離になれば他の輸送モードに比べてトータルコストが安くなります。

また、発送貨物に限りますが、貨物ターミナル駅で貨物の一時保管が1週間無料でできます。

使い方によっては、既存の倉庫スペースを削減するというコストの削減にもつながっていきます。

2.Co2排出量の削減

トラック輸送と鉄道輸送を比較した際に、鉄道輸送区間で約5分の1ものCo2の削減になります。(大阪―東京間600km)

全ての区間、トラックを使うことなく、輸送することはできませんが、鉄道輸送に切り替えることによって、Co2削減につながります。

また、鉄道輸送が普及することで、一般道を走るトラックの減少により、Co2削減以外にも道路交通状況の改善、事故率の低下などの道路環境改善にもつながってきます。

3.運送業界の課題の解決につながる

先に申し上げた通り、日本国内の貨物の90%以上はトラック輸送によって、運ばれています。

鉄道輸送のモーダルシフト化することによって、多くの貨物を運ぶ際の省人化を図れます。

メリットだけでなく以下のようなデメリットも存在します。

1.輸送リードタイムがトラックに比べて遅い場合がある

大阪―東京の輸送で夕方発車―翌日到着はするものの、貨物の引き受けにトラックを走らせることを考えると、ドアツードアで届くトラック輸送よりもリードタイムが長くなります。

2.近距離にはコスト面で不向き

長距離輸送になるほど鉄道輸送のコストが下げやすい特性を持っているため、近距離はコストが割高になる傾向があります。

3.運送時間・頻度に融通がききにくい

ダイヤで運行する鉄道輸送発車時間、到着時間が定められているため、時間に融通は利きません。

しかしながら定時発車率は95%と高い水準であるため、輸送に関してジャストインタイムでお届けすることが可能です。

このようにメリット・デメリットどちらもありますが、荷主企業にとって有益になるかは貨物の種類・エリアなどによって大きく変わってきます。

運送業界全体でのトラックドライバー不足やそれによって長時間労働や、過労運転等の労働環境の悪化につながる要因を減らすことができると考えられます。

本来は競合にあたる大手酒造企業の2社がタッグを組み、共同輸送を開始したことも記憶に新しい取り組みです。

これまでは各工場から別々にトラックで配送していたが、ドライバー不足の深刻化もあり、1社だけでは、解決できない課題にぶ直面しています。

競合同士である企業も物流面においては、協力体制で課題解決に向け動いているのも事実です。

鉄道輸送には上述したようにメリット・デメリットの両面があり、まだまだ輸送手段の主力は、トラックであることは変わらないでしょう。

鉄道輸送は、環境面では最も良い輸送手段ではあるものの、トラック輸送と比較した場合の集配能力、迅速性などの利便性は、その差が大きく感じられるのも事実です。

しかしながら、商品の価格競争、運送・物流業界の現状を考えると、トラック輸送に頼り切った考えでは将来的に、安定的な輸送が出来なくなる危機を迎えています。

トラックと鉄道の輸送モードの組み合わせで、どちらもの欠点を補いながら支えあっていくことが何よりも重要となります。

荷主企業としては環境問題対策として、また将来のリスクであるドライバー不足による輸送難民化の回避策として日本の鉄道網を効率よく利用するモーダルシフト化を改めて検討してみてはいかがでしょうか。

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