物流担当者の心得 ~原点回帰と理想追求~
宅配業界を筆頭に、運送会社の勤務実態が明るみになってきた今日、物流会社からの値上げ要請の対応に辟易されている荷主企業の物流担当者も多いのではないでしょうか。
「できるだけ値上げ幅を抑えよう」「配送以外でコストダウンできないか」など目前の対策を検討されている方も多いかと思いますが、これを機に一度、「そもそも運ぶ必要があるのか?」といった、抜本的なところから考えてみてはいかがでしょうか。
今回は荷主企業の物流担当者として、理想の物流体制を思い描く必要性についてお伝えします。
■実現性を無視した理想の物流の検討
荷主企業の物流担当者のミッションは、「商品が必要な期日までにお客様の手元にある」状態にすることです。
倉庫立地や配送手段は、目的を遂行するための方法に過ぎません。
一度倉庫やトラックといった固定概念を払拭し、実現性の乏しい内容でもいいので、数十年後を見据えた理想の物流を考えてみてください。
映画やマンガなどから考えたり、同僚とお酒を飲みながら意見を出し合ったりしてもいいでしょう。
多少飛躍したアイデアでも、テクノロジーは日進月歩で進化しています。
自由な発想が理想の物流へのカギとなります。
■先進的な装置・システムの調査
理想が何件か浮かんだら、最新の装置やシステムについて調べてみてください。
物流に関する展示会もあるので、参加してみてください。
基本的に先述の映画やマンガに出てくるような機能はおおよそ実現可能なものであると考えています。(四次元などの考え方は無理かもしれませんが…)
実現に近い例として、「モノを転送する」というシーンが挙げられます。
転送機能があれば、トラックでの実質的な配送は必要なくなります。
ではどのような機能が転送機能に近い仕組みなのでしょうか。
お察しの方もおられるかと思いますが、答えは「3Dプリンター」です。
納品先に3Dプリンターがあれば、データを転送することでその場にモノが手元に届くこととなります。
日々、3Dプリンターでできるものの素材やサイズも拡大しているため、実現できる商品ラインナップも増えていくことでしょう。
このように、一昔前には考えもしなかった機能が現実に生まれているのです。
30年前にKivaやRacrewのような棚そのものを動かしてピッキング作業をする方法などは、どれほどの方が予想していたでしょうか。
Amazon Goではもはや店員どころかセルフレジすらなくとも買い物ができるようになります。
上記のようなことは、仕組みを聞き、よくよく考えれば確かにできそうだなと納得できるものばかりです。
30年前との違いは、ただそのような発想が出なかっただけに尽きます。
つまり、発想できたものはすでにリリースされている可能性も高いのです。
理想の物流を少しでも頭に入れておくことにより、装置・システム機能などの一つ一つの見え方が自社の理想の体制に活用できるか、という視点に切り替わります。
また、気になったものに対して深く調べる上で、実現するための具体的な課題も見えてきます。
これが貴社物流の本来の課題になります。
■理想追求のための課題解決
課題が見えれば、当該のベンダーと相談したり、既存の物流会社やシステム会社と情報を共有したりすることで、課題解決のための費用や期間、実効性が明確になります。
おそらく費用・期間が原因で頓挫することが大半だと想定されます。
しかし、それで終わりではなく、自社の企業努力だけで一部は対応可能な部分もあるかと思います。
考え方はそのままに、できるところだけでもまずやってみることが重要です。
また、定期的に理想の物流についてゼロベースで考える時間を設けてみてください。
今回は物流担当者として理想の物流を常に念頭においておくという心構えについてお伝えさせていただきました。
これまでコストアップや物流事故などの「問題」がトリガーになって施策を考えるという方もおられたかと思います。
そのような問題解決も当然必要ですが、問題がトリガーである以上、ネガティブになりがちです。
ここまで読んでくださった方々には、「理想」に向けたポジティブな課題解決に取り組んでいただけると幸いです。