物流アウトソーシングのよくある失敗事例と成功のポイント

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朝比奈 実央

船井総研ロジ株式会社
ロジスティクスコンサルティング部

小売業や卸売業、製造業(自動車、化学品、機械など)といった幅広い分野におけるコンサルティングに従事。特に物流コスト適正化や現場改善、物流リスク評価などを得意としている。

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物流における様々なリスクが現れ、オペレーションが高度化する現在、『物流は専門家に任せて自社は本業に専念したい』と考える荷主企業は多いのではないでしょうか。確かに3PLなどの物流事業者に任せることはコスト抑制や物流品質など、物流専門だからこそ出せるメリットがあります。

一方で安易に業務を委託してしまうことで『自社でやったほうがよかった』と後悔するケースもあります。

今回はよくある物流アウトソーシングの失敗事例と、アウトソーシングを成功させるためのポイントについてお伝えします。

物流アウトソーシングのよくある失敗事例

①物流管理に割く工数(時間)が増加する

失敗事例の1つ目は、物流業務を委託することにより、自社内で物流管理に割く工数(時間)が増加してしまうケースです。

例えば、ある製造業の荷主企業A社では「物流は外部に委託し、自社は本業に専念する」という経営方針により、物流業務を3PLに委託しました。その後、3PLが実運送会社からの値上げ要請を頻繁に持ち込むようになりました。昨今の物流業界環境を鑑みれば値上げは避けられないものの、3PLを通して実運送会社に値上げの妥当性や根拠を確認するためのやりとりが増え、逆に物流管理のための時間が増えてしまう結果となりました。

このように、関係者が増えるとその分コミュニケーションにかかる工数は増加してしまいます。コミュニケーションにかかる工数が増えると、想定していたほど物流管理の工数を削減できないという場合があり、注意が必要です。

②物流コストが増加する

失敗事例の2つ目は、物流アウトソーシングの結果、物流コストが増加するケースです。一般的に、物流をアウトソーシングすると自社で倉庫やトラックなどの資産を保有する必要がなくなるため、自社で運営する場合と比べて物流コストを抑えられる傾向にあります。しかし、業務委託時の契約内容によってはむしろコストが増加してしまうケースも発生します。

例えば、ある製造業の荷主企業B社は事業拡大による物量増加に伴い、倉庫内の出荷作業を物流会社に委託しました。その後B社では委託前と比べて委託後の庫内人件費が増加してしまいました。なぜならB社と委託先でそれぞれが認識する業務内容や物流品質、双方の責任範囲に齟齬があったためです。

というのも、B社は自社で庫内作業を行っていた時と同水準の業務品質を委託先にも求めましたが、それが物流会社にとっては想定していた以上の難易度の高い品質水準でした。そのため、B社は現状の物流品質を維持するために委託先に追加料金を支払わざるをえず、委託前よりコストが増える結果となりました。

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物流アウトソーシング成功のポイント

それでは、物流アウトソーシングを成功させるには、どのような点に注意しなければならないのでしょうか。これまでお伝えした事例から考える成功のポイントはズバリ以下の2つです。

①委託先との定例会を設置する

1つ目のポイントは、委託先との定例会を設置し、定期的にコミュニケーションをとる場を用意するということです。3PLを使用している場合は、その定例会で元請け事業者から実運送会社の状況を把握する仕組みをつくることも重要です。予期しない値上げ要請やトラブルを避け、事前に対応を検討することができます。

このように定期的に関係者とコミュニケーションを取り、事前の計画ができる企業とそうでない企業では、物流管理の効率が大きく異なることは間違いありません。

②委託先選定時の要件定義を作り込む

2つ目のポイントは、委託先の選定時に作成する要件定義の完成度を高めることです。先ほどのB社の事例では、要件定義で委託内容や責任範囲について双方認識に齟齬があることが、コストの増加につながっていました。このように要件定義に不足があると、コストが増加するだけでなく、最悪の場合、出荷遅れなどの深刻なトラブルに発展しかねません。

そのような事態を防ぐために、委託前に委託内容や双方の責任範囲、委託先に求める物流KPIなどを細かく設定しておくことが非常に重要です。

さいごに

人材不足が深刻化する物流業界では、荷主企業における物流体制の在り方も大きく変化しつつあります。荷主企業においてはどこまでの業務をアウトソーシングし、どこまでを自社で管理するか、荷主の責任範囲を精査することが求められています。ぜひ本コラムを参考に自社の活動に役立てていただければ幸いです。

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朝比奈 実央

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ロジスティクスコンサルティング部

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