物流BCPは今すぐ策定すべき リスク管理に不可欠な防災対策

佐々木優芽

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佐々木 優芽

船井総研ロジ株式会社
ロジスティクスコンサルティング部

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BCP(事業継続計画)とは、自然災害・テロ・感染症等の緊急時において、早期に事業を復旧し業務を継続するための手段を取り決めておくことです。昨今の日本では、パンデミックや巨大地震発生のリスクから、物流におけるBCP策定の重要性が高まっています。

1.物流BCP策定の重要性

日本は災害大国とよばれ、地震・津波・豪雨等の自然災害が起こりやすい国です。2011年3月に起きた東日本大震災では、サプライチェーンが寸断されたことにより、多くの企業の事業継続に支障が生じました。これを受け国土交通省は、2015年3月に「荷主と物流事業者が連携したBCP策定のためのガイドライン」を策定し、荷主や物流事業者に対して緊急時における事業継続の対策を講じています。

日々の業務に忙殺され、いつ来るかわからない有事の準備は後回しになりがちですが、いざという時に大きな損害を出さないためには、”いつ何が起きてもおかしくない”という考えに切り替えるべきです。

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2.今すぐ始めるべき防災対策

国土交通省が策定した「荷主と物流事業者が連携したBCP策定のためのガイドライン」では、次のような防災対策を示しています。

①人材の確保・育成

適切なBCPを策定するためには、サプライチェーン全体を理解・把握しているBCP担当者を配置することが重要です。担当者を選任していない場合は、急ぎ担当者を選任することから始めましょう。加えて、BCPへの知見を深めるために、関連セミナーへの参加の推進や社内教育を行い、BCP担当者を育成していくことが必要です。

既にBCP担当者を選任している場合は、緊急時にBCPを有効に機能させるためにも、担当者が日頃から自社のBCPに対する理解を深めることが必要です。策定して終了ではなく、緊急時を想定した社内研修や訓練を定期的に行い、社内におけるBCPへの理解浸透に努めましょう。

②BCP発動時の体制の確立と、人的応援・支援の整備

緊急時における迅速な意志決定、意志伝達、指揮命令は、企業の事業継続のために重要となります。よって、平常時より緊急時における意志決定等を行う責任者を選任し、BCP発動時の組織体制を確立することが必要です。

また、緊急時においては、被害状況により平常時の担当者不在や通信が遮断される場合も考えられます。そのため、荷主企業や物流事業者は、それぞれの営業所間、荷主と物流事業者間、同業他社間等における人的な応援・支援体制を整備し、平常時から各所での協力体制を構築しましょう。

③物流施設・輸送力の確保

物流施設やトラックが被災すると、平常時の施設機能や輸送力が確保できなくなることが想定されます。サプライチェーン維持のために、施設機能の強靭化対策や、代替輸送手段・ルートによる輸送力の確保を事前に準備することが必要です。

④作業の標準化・従業員の多能化

一部の物流施設において業務が停止した場合は、当該施設への代替人員の配置や他の物流施設での業務代替が想定されます。緊急時においても、物流施設内の作業が速やかに実施できるように、商品ロケーションやピッキング手順は標準化を進めることが重要です。

また、物流施設において、緊急時に平常時の人員配置が困難な場合もあります。同一施設内の従業員が複数の作業に対応できるよう、平常時から教育や定期的な配置換えを行いましょう。従事可能な業務の多能化を推進し標準的なオペレーションを実現することが肝要です。

他にも防災対策として、行動マニュアルの作成や被害情報を共有できる仕組みづくり、入出庫や在庫管理情報に関するITシステム化の推進等が挙げられます。

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さいごに

物流BCPの中でも防災対策は、緊急時の事業継続性を高めるだけでなく、ESG経営におけるガバナンスへの取り組みにもつながります。自然災害への対策を強化し、皆さんで持続可能な物流を目指しましょう。

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