物流コスト削減の基本事例

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渡邉 庸介

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、卸売業、小売業には自社物流戦略再構築支援プロジェクト、業務改善コンサルティングを推進。物流企業に対しては荷主企業のコストダウン要求にこたえるコスト体質強化を中心に活動している。特に中長期の成長戦略を支える物流体制構築に注力し、拠点配置の見直し・SCM構築などの中長期物流戦略立案から倉庫業務改善や契約内容の見直し・業務の見直しなどの実行まで従事してきた。​​

本コラムでは、「物流コスト削減」をテーマに、当社の物流コンサルティングによって、実際に物流コストの上昇を抑えることができた取り組みをご紹介します。

物流コスト削減の視点

物流コスト削減をテーマにしたプロジェクトで多く目にするのが、販売内容が大きく変化しているにもかかわらず、物流の構造がほとんど変化していないケースです。

不具合に合わせ、細かな対応を繰り返し行うことができても、抜本的な見直しを進めることはなかなかできません。また、一度構築した物流体制を10年近く見直していないという企業も少なくないようです。

それでは、貴社の物流体制はいかがでしょうか。客観的に見て、商品の取り扱いや販売内容は5~10年で大きく変化していませんか?

当社が物流コスト削減を進める場合、下記の項目を確認します。

物流コスト削減 チェック項目(一例)

  • ・販売量
  • ・取扱商品点数
  • ・在庫量
  • ・お客様への販売ロット
  • ・お客様への納品回数
  • ・納品時のお客様要望
  • ・お客様の構成
  • ・販売チャネルの売上構成
  • ・お客様の納品先立地 など

上記の変化に対して、部分的な対応を繰り返し実施することで、物流コストの上昇を何とか抑制できている企業もあるかもしれません。しかし、積み重なった変化は、どこかで抜本的に見直さなければ、大きなギャップを生むことは容易に想像がつきます。

国内物流環境が大きく変化する際に、そのギャップをリセットできていなければ、問題が大きく表面化する可能性が高くなります。


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物流コスト削減の方法

上記の「ギャップ」を修正し、物流業務の負荷を減らすことが、物流コスト上昇の抑制につながります。物流業務の負荷を減らす具体的な方法に下記の7つがあります。

  1. 1.過剰サービスの抑制(物流サービスの再設定)
  2. 2.物流拠点の再配置
  3. 3.倉庫保管レイアウトの再設計
  4. 4.倉庫作業省力化設備の導入
  5. 5.業務改善
  6. 6.配送便の見直し
  7. 7.物流関連業務システムの導入

1.過剰サービスの抑制(物流サービスの再設定)

納品に関する条件は取引先によって異なります。この納品条件の違い・物流サービスを本当に必要な項目に絞り込むことが重要です。

例えば、1出荷の小口化、商品の品揃え、在庫の持ち方、納品回数の見直しなど、物流サービスのあり方そのものは、得意先との取引条件のあり方そのものを反映しています。

現在、取引先へ提示している発注条件と納品条件を本当に必要な事項に絞り込みましょう。また、昔からの慣習で残っているような物流サービスを撤廃し、物流業務の負荷を減らしていきましょう。

2.物流拠点の再配置

「得意先の変化」は意外と進んでいます。一度、お客様の配置を日本地図にマッピングしてみてください。

みなさまの会社の在庫拠点の配置と合致しているでしょうか?その在庫拠点を設置した当初は最適な配置だったかもしれませんが、5~10年経過すると、ずいぶん様変わりしていることがあります。

お客様の配置と在庫拠点のギャップは大きな物流業務の負荷を生むことになるため、注意が必要です。

3.倉庫保管レイアウトの再設計

倉庫の取り扱い商品数の変化は、倉庫のレイアウト・ロケーションに影響します。また、商品数の増加、商品特性の変更(商品形状・商品サイズ・出荷ロットなど)は、倉庫の保管効率に影響します。

無理な保管方法は、倉庫作業の業務効率に直結し、相乗的な効率低下を起こします。直近の商品在庫、商品形状、SKU数、出荷傾向をもとに保管方法を再設計しましょう。

また、倉庫保管レイアウトの再設計は、利用スペースを圧縮し、入出荷作業の工数抑制にも効果を発揮します。


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4.倉庫作業省力化設備の導入

倉庫作業の負荷軽減を図るには、今後の倉庫作業の人員確保の難しさも考慮しなければなりません。労働人口減少と倉庫作業員の人件費上昇を踏まえると、安定した物流倉庫運営のために、「人に頼らない機械化」に転換する時期ともいえます。

また、物流倉庫運営の難しさのひとつに、物量の波動があります。今までは人海戦術で何とか対応できた倉庫も、今後は同様に運営できるとは限りません。物量の波動という瞬間的な作業負荷の増大も機械化によって解消していきましょう。

5.倉庫業務改善

前述にあるような倉庫内のギャップによる改善に取り組むことは必須ですが、どの倉庫でも一様に機械化を図ることができるものではありません。

倉庫規模によっては、「機械化に頼らない業務改善」、従来からのムダ取りによる業務改善に取り組むことが効果的な倉庫もあります。

いかに倉庫作業の工数を抑制するか?をマニュアル作業の視点で追及しましょう。

6.配送便の見直し

過去からのギャップが積み重ねられているのは倉庫だけではありません。得意先への配送便にも同様のことが発生しています。特に、得意先配置の変化、得意先への1回あたりの納品物量の変化がよく見られます。得意先の配置によっては、ルート便の再検証による物流コストの削減も考えられます。

また、1回あたりの納品物量が変化している場合は、過去の運送便マスタを見直してください。配送内容からみて、選択している運送便契約が合理性を失っているケースが多くあります。

くわえて、配送の小口化が、どの企業にとっても課題となっています。その対策として、過去になかった「共同配送便」も生まれています。物流コスト削減には、配送便を抜本的に見直すことが肝要です。

7.物流関連業務システムの導入

この2~3年で、物流分野の情報システムは大きく変革しています。ツールの種類もそうですが、AIが現場に実装され、成果も確認されています。

画像認識技術を活用した検品など、自社業務に活用できるかを検証しましょう。これまで人が行っていた確認業務や入力業務といった単純作業がAIに置き換わることで、人的ミスの削減ができます。

2024年問題のタイムリミット

物流業界では、2024年問題への関心が高まっています。荷主企業・物流企業のみなさまは、その対策について、社内でよく話し合われているでしょうか?

この2024年問題は、国内の製造業、卸売業、小売業の物流に、もれなく影響が出る課題です。しかも、その影響は確実に物流コストの上昇、またはトラックが見つからないという形で顕在化することが推測されます。

この影響を最小限に抑えるには、今までの物流体制を維持するのではなく、これからの国内物流環境に適応した形に変化させることが必要です。2024年問題への対策は、遅くても2023年から物流業界で実行されていきます。そのため、2022年には施策検討を行い、2023年までの間に実行しなければなりません。

つまり、2022年が2024年問題への対策検討のタイムリミットと位置づけられます。

まとめ

2024年を前に、早い企業はすでに「物流改革」に取り組んでいます。さきほどお伝えした通り、「 2022年」が2024年問題への対策検討のタイムリミットです。

まずは、今回取り上げたようなギャップが物流に余計な負荷を与えていないかを確認してみてください。ギャップがあれば、まだまだ物流コストを削減できる可能性があります。十分に用意をして、2024年問題の影響を最小限に抑えましょう。

当社は、物流コスト削減物流戦略策定、物量データの分析、コストレベルの精査、取り組み事項の抽出、改善に向けたアクションプランの提示といった物流コンサルティングサービスを提供しています。物流にお悩みの方は、ぜひ当社へお問合せください。

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概要
2024年4月施行のドライバーの総残業規制は、物流企業だけでなく、荷主企業への影響も甚大です。早い企業は既に物流戦略の立て直しを進めています。これからの物流戦略について解説します。
詳細
https://logiiiii.f-logi.com/documents/know-how/butsuryusenryaku2024/

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渡邉 庸介

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、卸売業、小売業には自社物流戦略再構築支援プロジェクト、業務改善コンサルティングを推進。物流企業に対しては荷主企業のコストダウン要求にこたえるコスト体質強化を中心に活動している。特に中長期の成長戦略を支える物流体制構築に注力し、拠点配置の見直し・SCM構築などの中長期物流戦略立案から倉庫業務改善や契約内容の見直し・業務の見直しなどの実行まで従事してきた。​​

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