今だからこそ求められる物流部門と物流子会社の役割

Pen Iconこの記事の執筆者

渡邉 庸介

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、卸売業、小売業には自社物流戦略再構築支援プロジェクト、業務改善コンサルティングを推進。物流企業に対しては荷主企業のコストダウン要求にこたえるコスト体質強化を中心に活動している。特に中長期の成長戦略を支える物流体制構築に注力し、拠点配置の見直し・SCM構築などの中長期物流戦略立案から倉庫業務改善や契約内容の見直し・業務の見直しなどの実行まで従事してきた。​​

物流業界は大きく変化を始めていますが、あまりにも大きな変化のために、荷主企業の皆様は方針決定に苦心されているのではないでしょうか?
我々のコンサルティング現場でも下記のような声が荷主企業の相談として高まっています。
・コストUPがネックになり拠点を増やせない
・新拠点での契約運賃が現行レベルと比較して高い
・物流会社からの値上げの一方で会社からは物流コスト抑制策を求められる。

今後の国内物流を鑑みたときに、今のコストパフォーマンスでこの先も継続できるとは考えていないが、コストUPする計画を立案できないといったジレンマです。

しかし、物流が混乱するリスクを抱えたまま、事態が悪化するまで舵を切らないのは経営として非常に危険な状態といえます。どれだけ売り上げ拡大に邁進しても、物流がその足枷となる企業も出てくるのではないでしょうか。

そのような中で改めて感じるのは「物流部門」「物流子会社」の役割です。物流業と荷主のパワーバランスが大きく転換したこの時期に物流部門と物流子会社が担う役割が高まっていると感じます。
「物流部門」「物流子会社」が最低限やらなければならない動きは下記5点になります。

1.物流が包含しているリスクを経営層に伝えること

物流が包含しているリスクは単なる運賃UPだけではありません。物流企業の配送キャパシティに拡大の余地が見いだされない中、物流企業による荷物の選別が行われます。得意先に商品を届けるという手段を確保することが容易ではなくなります。コストUPだけでなく、安定した物流を確保することも困難になるリスクも包含しているのです。また、倉庫では作業員確保が難しく、作業人件費も高騰する一方です。配送、倉庫作業人件費をはじめとした物流コストの上昇はそのまま営業利益の低下に直結します。経営層には物流戦略の見直しを喫緊の課題として伝えなければなりません。

2.今後の経営計画に沿って物流視点でのリスクを洗い出すこと

今後の経営計画を反映して、必要とされる物流キャパシティを試算する必要があります。現行の物量では充足していても、拡大計画の中で見ると保管機能、配送機能が不足することが考えられます。
物流環境を反映して、中期で見た物流機能のリスクを検討することが必要といえます。

3.コストUPした時の影響を数値試算すること

リスクを伝えるあるいはその影響の深刻さを伝えるには、数値化することが必須です。特にコスト面を予測することでその影響と取るべき施策の比較ができ、費用対効果から経営判断が可能になります。

4.コストUPに対するコスト抑制策を策定すること

コストUPを推定するだけでなく、コストダウンする具体策を検討しなければなりません。物流担当部署、物流子会社としては物流コストUPのリスクを経営層に伝えることは当然ですが、そればかりでは十分な役割を果たしているとは評価されないでしょう。
・保管効率向上策(=倉庫利用面積を圧縮することで保管コストを抑制する施策)
・倉庫作業効率向上策(=倉庫作業工数を圧縮することで作業人件費を抑制する施策)
・配送効率向上策(=得意先との納品条件を見直すことで配送回数を抑止する施策)
物流領域だけではコスト抑制策は限られるため効果は薄く、荷主企業が主導して製造部門と販売部門を巻き込みながら物流の効率向上を策定することが必要です。

5.「物流企業に敬遠される荷主」にならないように荷物を見直す視点を持つこと

ドライバーが増えない中、トラック台数は一定の状態にあります。トラック事業者は変わらないトラック台数の中で如何に収益を増やすかを考えて荷物を選別することになります。荷主企業としては物流企業から見て「選ばれる仕事になるか?」が安定物流を構築する大きなポイントとなります。そのためには今までと同じように考えるのではなく、配送における条件を政策的に変えることが望まれます。検討のポイントは下記になります。

・時間指定 :時間指定は配送効率を制限するため敬遠されやすくなります
・集荷時間 :荷主が物流企業に荷物を受け渡す時間が遅いと敬遠されやすくなります
・梱包状態 :簡易梱包は荷扱いし辛いため敬遠されやすくなります
・荷姿 :ケース以外は積み辛いため敬遠されやすくなります
・サイズ :大きいサイズは敬遠されます
・重量 :重い荷物(1個20㎏以上)は敬遠されやすくなります
物流企業と荷主企業のパワーバランスは完全に入れ替わりました。今までの環境と同じように物流を考えていては、物流企業に振り向かれない荷主になる可能性があるのです。

この度の物流の変革は製造業、卸売業、小売業の全てに及ぶものです。上流が変化すると下流も変化を求められるため、これから各所に変化が生まれることと考えられます。荷主企業の皆様は物流が今後の企業成長の足枷とならないように、先んじた物流戦略の見直しが急務になっています。物流部門、物流子会社が旗を振って戦略を見直してみてください。きっと貴社の5年後の物流リスクは低減しています。

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渡邉 庸介

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、卸売業、小売業には自社物流戦略再構築支援プロジェクト、業務改善コンサルティングを推進。物流企業に対しては荷主企業のコストダウン要求にこたえるコスト体質強化を中心に活動している。特に中長期の成長戦略を支える物流体制構築に注力し、拠点配置の見直し・SCM構築などの中長期物流戦略立案から倉庫業務改善や契約内容の見直し・業務の見直しなどの実行まで従事してきた。​​

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