「任意」から「必須」へ変わるダイバーシティ戦略: 企業存続をかけた物流業界の女性活躍
2012年にトラガール促進が始まって以降、約10年間で女性ドライバーの比率は2.2%から3%(2023年)へと微増にとどまっています。一方で20%もの女性が活躍する物流会社もあり、どのような取り組みをしているのか本コラムでお伝えします。
- 【関連する資料】
- 物流企業のための人材課題 対策ガイドセット
- ≫ ダウンロード(無料)はこちら
目次
1.「時間軸」の多様化を前提とした採用活動を行う
女性をターゲットとした場合、どうしても男性に比べて勤務時間や日数に個別対応が必要な場合が発生しやすくなります。
例えば、「午前・午後限定」「週○日勤務」「地場配送固定」といった、時間とエリアを限定した多様な働き方をつくることで、子供を送り出した時間帯だけ働くことができます。
もしくは稼働日数を調整することで、扶養を外れることなく継続勤務が可能です。実際に、コンビニ配送を行う会社では、1日3便のうち午後だけを担当する女性ドライバーが活躍しています。
またパート採用であれば、夏ごろに今の稼ぎと扶養内で働くのかどうか方向性を面談して年内のシフトを計画的に調整しています。「正社員フルタイム」だけでなく、柔軟なシフトは、結果として全従業員の労働環境改善に繋がり、定着率全体を押し上げます。
2.「職種」の再定義
運転業務だけでなく、運行管理補助、倉庫内ピッキング管理、事務作業などと複合させたマルチタスク型の職種を創出することで、運転時間以外の時間も効率的に活用でき、女性の多様なスキルを活かせます。
また、運転と力仕事を要する作業を分離させることも参入ハードルを引き下げることになります。
3.設備投資を「コスト」ではなく「現場DX」と捉える
女性の視点から現場を見直すことで、従来の「力と根性」に依存していた非効率な業務プロセスを洗い出し、全従業員の生産性を向上させる「現場DX」を推進できます。
例えば、重い荷役にパワーゲート、アシストスーツなどを導入することによる負担減、労災リスク低減、作業スピードの安定化。属人性の排除による、定時退社文化の確立など。これらの投資を「女性のための特別支出」ではなく、「時代に適応するための必須のインフラ投資」と捉えるべきです。
4.女性管理職の戦略的登用:
妊娠・出産後の復職を見据えた時短勤務の管理職や、女性メンターを意図的に増やします。
これにより、ロールモデルを示し、キャリアへの不安を取り除くとともに、組織全体に多様な視点とコミュニケーション能力を注入し、社内の風通しを良くします。実際に愛知にある会社では、「安全衛生」や「管理栄養士」「ES推進」など営業・安全・健康・企画・運行・事務に係る役割を女性に戦略的に任せ、全社の2割を女性が占めています。
仕事を人に合わせるのではなく、人に仕事を合わせるという考え方へシフトされています。
女性採用は、自社の体質を根本から改善し、高生産性・高定着率の企業へと生まれ変わるための機会にもなりえるのです。



