「優秀なドライバー=優秀な安全管理者候補」は間違い!
物流・運送業界において、ドライバーの安全意識向上は永遠の課題です。その対策の一つとして、経験豊富で運転技術に長けたエースドライバーを、後進を指導する「安全管理者」や「教育担当者」に任命するケースがよく見られます。
しかし、この一見合理的に見える人材登用が、必ずしも良い結果を生むとは限りません。本コラムでは、優秀なプレイヤーが必ずしも優秀な指導者ではないという視点から、これからの安全管理者の選任・育成方法について考察します。
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目次
優秀なドライバーを教育者にするのは間違っている
「事故率が低く、運転がうまいAさんを、新人教育の担当者にしよう」。これは、多くの運送会社で聞かれる光景かもしれません。しかし、この判断は大きな間違いを招く可能性があります。
優秀なドライバーは、長年の経験から培った独自の感覚や無意識の判断で、安全な運転を実践していることが少なくありません。彼らにとって安全運転は「当たり前」のことであり、なぜそれができないのかを論理的に説明したり、相手のレベルに合わせて教えたりすることが苦手な場合があります。
結果として、「見て覚えろ」といった旧来の指導に陥ったりしてしまいがちです。
では、どのように教育者を選任するべきか
管理者の選任におけるミスマッチを防ぐためには、評価の仕組みそのものを見直す必要があります。まず取り組むべきは、評価軸の定量化と客観化です。個人の印象や経験談に頼るのではなく、誰が見ても同じ基準で判断できるツールを活用することが重要です。
例えば、デジタルタコグラフ(デジタコ)の運転評価点数や、AI搭載ドライブレコーダーによる危険挙動の検出データなどが挙げられます。これらのツールは、急加速・急ブレーキの回数や車間距離の保持といった項目を客観的な数値で示してくれます。
人の感覚を排した絶対的な基準を用いることで、評価の公平性を担保し、真に安全運転を実践しているドライバーを正しく評価できます。
本人の「やりたい」を尊重する組織作り
そして最も重要なのは、管理者へのキャリアアップは、会社からの指名だけでなく、本人の「やりたい」という意思を尊重する仕組みにすることです。
実際の事例
ある運送会社では、管理者・教育者の育成において独自の優れた仕組みを構築しています。この会社では、教育者に必要な能力を大きく4つに定義しています。それは、「指導力」「説得力」「構成力」「表現・演技力」です。
- ・指導力:相手の理解度に合わせて、根気強く教える力
- ・説得力:なぜ安全運転が必要なのかを、データや事例を用いて論理的に納得させる力
- ・構成力:指導内容を分かりやすく組み立て、順序立てて伝える力
- ・表現・演技力:時に危険な場面を再現するなど、相手の心に響くように伝えるパフォーマンス力
この時、大切なことはドライバーが「教育者になりたい」と意思表示をした段階では、これらの能力が備わっている必要はない、という点です。大切なのは、あくまで「なりたい」という意欲。その意欲を持ったドライバーに対し、会社が専門の「養成講座」を実施し、最終的に試験に合格した者だけが、正式なトレーナーとして認定されるのです。
さいごに
このように、プレイヤーとしての実績だけでなく、「教えること」への適性と意欲を見極め、会社が責任を持って育成する仕組みを整えること。これこそが、組織全体の安全レベルを底上げできるサイクルを構築します。
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