働き方改革推進による物流サービスレベルの低下 ~2020年物流業界時流(5)~

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

約7週間ぶりに緊急事態が解除され、日常活動に戻れる兆しは見えてきました。
そうはいっても経済活動が一気に全面再開することは難しく、今後第二波、第三波の可能性があり、予断を許さない状況です。

関係者から聞こえる声として、
「業務用は30%~40%のマイナス、家庭用は10%~20%のプラスで昨対は10%~20%のダウン!」
これは食品物流に携わる運送会社さんの生の声です。

燃料業界も3月4月5月と大幅に価格が下落し、購買量も落ち販売先の倒産リスクが高まっています。
6月は石油産油国の減産調整が効き始め、やや価格は戻るようです。

コロナウィルスと向き合った生活が続くなかで、物流業界も大きなうねりを受けています。
今号も引き続き、“2020年物流時流予測”の中で、「6.働き方改革推進による物流サービスレベルの低下」についてお伝えします。

働き方改革推進による物流サービスレベルの低下

荷主も物流事業者も働き方改革は急務です。
コロナウィルスの影響もあり、通常業務がままならない日常ですが、リモート勤務スタート元年という働き方改革を推進するうえでは、拍車がかかる一年となりそうです。

ここで荷主が想定しておくべきことは、「物流サービスは一旦低下する」ことの認識です。
コロナ問題を除いたとしても、今の日本における労働環境から抜け出すには、これまでの悪しき慣習を一旦取り払って、業務内容を再定義する必要があります。

特に物流事業者へ長く負担となっていた以下5項目は、喫緊の課題として捉え、是正を行う事は急務です。

(1)集荷時間の短縮化 

17時以降は特別な事情や正当なダイヤグラムでない限り困難となる

(2)ドライバーの付帯業務

リフトを使った積み下ろし作業やセンター内での商品の移送などは付帯作業

(3)出荷締切時間外の出荷

最終バッチ以降の追加対応はこれまで通りにはいかなくなる

(4)宵積み

ドライバーの拘束時間によっては、朝積みに切り替える必要がある

(5)緊急対応

多くの場合、課金での対応か拒絶の可能性がある

これらは、「時間」と「付加作業」がキーワードであり、これまで当たり前として提供を受けていた事が働き方改革によってNG化される事象です。
荷主の強いバイイングパワーによって享受されてきた各種の物流サービスは、完全に瓦解します。

解決の糸口はズバリ「デジタル化」です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)改革を行う上で、物流サービスの再定義は、直ぐにでも取り組むことが安定的な物流サービスを展開できるたったひとつの手法です。
デジタル化は、リスク回避の有効な手立てとなると同時に、改革を実行できない企業は敗者と成り得ることを真剣に考えて取り組むべきでしょう。

次回以降も残りの時流キーワードについて考察します。

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