第303回 日本型3PL「期待していいこと、出来ないこと」(8)
今年に入って早くも4ヶ月目となりますが、荷主企業からのご相談が後を絶たない状況です。
弊社へのご相談内容を簡単に纏めると、以下の通りです。
1.物流戦略(SCM)の再構築
・調達物流、生産物流、販売物流とそれぞれが機能的に最適化を図ってきたが、組織や部門の壁を取り払って全体最適化を実行したい。
2.配送体制の見直し
・配送モードの改革を実行したい。
・路線便利用や自社のみでの積み合せ便では最適化の限界を感じ、今後の運賃値上がりトレンドに対応できないため、共同配送(国内)や中長距離における鉄道輸送・船舶輸送を検討したい。
3.拠点分散の検証
・これまで拠点集約を徹底的に行ってきたが、今後の配送環境を考えると拠点分散は不可避となる。そこで、拠点分散におけるサービスレベルやコストの検証を行いたい。
4.委託先変更(物流コンペ)
・物流戦略を見直すことにより、既存の委託先も改めて再選定するので、RFP作成や評価などの物流コンペを支援して欲しい。
5.物流コスト評価
・自社で物流最適化を図ってきたが、市場価格と比較してどのポジション(高い?安い?)にあるのかわからないため、コスト評価を行いたい。
これらの課題を抱えている企業規模は、年商数百億円から数兆円の巨大企業。
どちらのクライアント(ご依頼人)も物流環境の大変革に脅威を感じている模様です。
我々コンサルタントは何をやるにしても、まずは“現状分析”を行います。
その現状分析手法を5月の『Funai物流オープンカレッジ」で大公開致します。
自社で物流改革を実行するには、正しい分析手法を学んでから進めることが肝要です。
分析手法大公開はこちら
http://www.f-logi.com/study/flogi_open_201705.html
日本型3PLへ期待していいことは、ズバリ!「曖昧さ」です。
契約社会である米国や欧州では、物流契約においても曖昧さは排除されています。
・料金や作業における項目の定義
・責任の所在地(誰の責任か)
・デフォルトとオプションの区分
これら3項目が日本型3PLはかなり曖昧な取り決めで契約されることが多く見受けられます。
日本の物流契約では、契約書において、費用項目の定義を明確に定めている事例はほとんどありません。
例えば「入荷料 20円/個」・・よく見られる契約(覚書)の一項目です。
この入荷料に該当する作業内容はいったい何なのか?
契約書や覚書を見るだけでその業務内容が見えないことが日本型3PLの特徴でもあります。
数量を数えるだけなのか、外装ケースのダメージを検品するのか、箱を空けて色やサイズまで細かく検品するのかなど、取り決めはあるものの契約書へその内容が記載されていないことが大半です。
細かく決まっていないことによって、荷主企業からの突発的なリクエストには応じてくれるのが日本の物流取引でもあります。
荷主の物流部からは「よくやってくれている」や「無理を聞いてくれる」などの感想がよく聞こえてきます。
お互いの曖昧さが招いたひとつの事象ではありますが、今後このやり方は長続きできないと思って下さい。
物流サービスは無料ではありません。
曖昧さによって押し付けられた業務は、物流会社の負担となり、利益圧迫原因として課題となっています。
物流業界は今、大きくうねりをあげながら変化しています。
これまで通りの荷主優位な取引関係は崩れつつあります。
この時流に気づかない荷主は、ある時突然“Xデー”がくるかも知れません。
次号は物流サービスにおけるデフォルト(標準作業)とオプション(追加作業)について考察します。
次号に続く
※3PL(Third Party Logistics)の概念は以下をご覧ください。