第300回 日本型3PL「期待していいこと、出来ないこと」(5)
2016年度の物流企業各社は、概ね好決算を迎えるようです。
2015年度に料金の是正や改定を実施した影響が通期で寄与し、貨物量は低調ではありましたが、新規の取り込みや既存顧客の増大に支えられた結果、増益となる見込みです。
景気に左右されずに、物流企業の業績が好調な理由のひとつとして、「管理会計」の緻密化があげられます。
支店・営業所単位であった拠点収支が、会計システムの向上により荷主単位で算出され、黒字・赤字顧客が明確に管理できるようになりました。
管理会計システムの高度化が進むと、赤字顧客へ対する取引適正化の交渉が、今後益々活発になることが予想されます。
荷主企業としては、自社の取引価格が市場相場の適正値ポジションにあるのか否かを知ることが喫緊の課題でもあります。
そういう意味では荷主と物流企業の虚々実々の駆け引きは、今年は一層激化するのはないでしょうか。
今シリーズは「日本型3PL」と「欧米型3PL」の違いについて考察していきます。
ファンドの物流倉庫物件を、物流企業が賃借して、荷主へ提供する。
倉庫荷役は物流企業が自社で行う。WMSは物流企業が企画・開発する。
マテハンも物流企業が投資負担を行い、利用料として荷主企業へ請求する。
さて、これは3PLスキームでしょうか?
正解は「Yes」でもあり「No」でもあります。
日本型3PLは上述の取引スキームが大半となっています。
実際は、アセット(倉庫)のみ他人資産を活用しているだけで、昔からの物流取引と大きく変化はしていません。
3PLの3は “Third Party”つまり、荷主でもなく、運輸・倉庫事業者でもない「第三の存在」を意味しています。
日本型3PLの本質は2PL(Second Party)が主役となっていることです。
第三の存在(3PL)ではなく、いわゆる受託する当事者(2PL)が3PLと呼ばれているのです。
顧客の拠点立地が、調達や配送の利便性を十分に分析・検討したうえで最適なものであれば、自社倉庫だろうとファンドの大型マルチ物件だろうと、問題はありません。
3PLから拠点提案を受けた時、「なぜ、その物件なのですか?」と質問をぶつけて、その回答が合理性のあるものであれば、OKです。
もし、明確な回答もなければ、とりあえず物件を手当したレベルと捉えるしかないでしょう。
拠点合理性のポイントは、以下5つの視点を勘案すれば良いでしょう。
・配送リードタイムの最短ポイントである
・調達利便性が高い
・拠点運営における要求機能を満たしている
・求められるコストレンジに収まっている
・BCP要求を満たしている
これらの要求ポイントがいくつ網羅されているか?
物流企業からの拠点提案が自社にとって有用な物件であるのかは、提案された物件の活用合理性を正しく判断する必要があります。
次号に続く ・・・
※3PL(Third Party Logistics)の概念は以下をご覧ください。