第30回 物流M&A(9)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

前号では、B/S上の数字から簡便的に企業価値を算出する方法を紹介しました。

今回は(2)マーケット・アプローチを紹介します。

このアプローチの利点は、『マーケット』という第三者が行った評価を利用する ため、客観性が高いということです。

つまり、公開企業であれば株価、非公開 企業であれば類似企業との比較によって価値が計算されます。

公開企業の場合は、ご存知のように、時価総額が株式取得のための必要資金であ り、これを株主資本価値ともいいます。

ここに、有利子負債など他人資本を加えた結果を、総資本価値と呼びます。

発行済み株式数 × 1株あたり株価= 時価総額 = 株主資本価値・・(A)
株主資本価値(A)+ 他人資本   = 総資本価値・・(B)

次に、非公開会社の場合をみていきましょう。

ここでは、理論的な株主資本価値を計算する方法を紹介します。

①評価したい非上場会社(【▲▲運輸】とします)と事業内容・規模・財務体質など が類似した上場企業(【○○物流】とします)をピックアップ

②【○○物流】の総資本価値を、(B)式で計算・・(C)

③②で求めた(C)に対する、主要財務指標(ここでは売上高)の乗数を算出  【○○物流】総資本価値(C)/【○○物流】売上高 = 売上高乗数 ・・(D)

④③でもとめた乗数(D)を【▲▲運輸】の主要財務指標にあてはめ、総資本価値を推定  【▲▲運輸】売上高 × 売上高乗数(D)=【▲▲運輸】総資本価値・・(E)

⑤④でもとめた(E)から、【▲▲運輸】の他人資本額を減算して、株主資本価値を推定  【▲▲運輸】総資本価値(E)-【▲▲運輸】他人資本額 =【▲▲運輸】株主資本価値  

【▲▲運輸】の売上高と他人資本額は、B/S、P/Lで実際の数値を調べることが できますね。

この方法を使えば、評価したい非上場企業【▲▲運輸】について、上場企業である【○○物流】に対するマーケットの見方を当てはめた上での、理論的な株主資本価値(=時価総額)を求めることができます。

また、上記では財務指標として 売上高を使っていますが、営業利益等、いろいろな指標を使って幾つかの乗数(D)を 計算し、それぞれで求められた株主資本価値を平均したり、あるいは「最低でも○億円、 最高は○○億円」などと、交渉の際の許容範囲を決めておく方法も良いでしょう。

ここでのポイントは、いかに類似した企業を選択できるかという点です。

次回は、企業価値評価によく使われる、用語のあれこれをご紹介します。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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