第297回 日本型3PL「期待していいこと、出来ないこと」(2)
今年も残り1週間となりました。
2016年を振り返ると、中国経済の減速により日本の物流市場も苦戦を強いられると年初は予想しましたが、力強い個人消費(ネット通販)の成長と東京五輪に向けた建設・土木投資に支えられ、下期以降は堅調な伸びが見受けられます。
特に物流センターの建設は活発で、2020年に向けて毎年120万坪から180万坪程度の新築物流センターが竣工されます。(関東・中部・近畿の非物流会社が着工した物件の合計)
関東は、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の整備化により埼玉・茨城・神奈川の内陸地への大型倉庫建築が進んでいます。
大阪では北摂エリアに新築物件が集中し、大阪湾臨港エリアはやや空坪率が上昇しています。
今着工している大型物流センターは大半が不動産ファンドが手がけるマルチテナント方式の物件です。
マルチテナント方式とは、わかり易くいいますと「誰もが使える汎用的な賃貸物流センター」と理解して下さい。
これらの物件は、物流センター大型化の象徴的な建築物であり、近代的な施設でもあります。
特に、ネット通販・小売物流センター・輸出入貨物の取扱に利便性が高いことが特徴です。
では、ファンドが手掛ける大型マルチテナント物件は、いったい誰が利用しているのでしょうか?
正解は、その大半の賃借人は「物流企業」です。
(船井総研ロジの分析では約75%以上の賃借人は物流企業)
日本の物流企業が手掛ける2016年度3PLマーケットは、年間約2.5兆円〜約2.8兆円(船井総研ロジ分析)と捉えています。
これは『日本型3PL』マーケットの市場規模とも言えます。
(実際には外資物流企業による本来の3PLも極少数見受けられるが)
筆者が「日本型3PL」と表現している理由は、欧米モデルの3PLとは異なり、ほぼ全ての国内物流事業者は「一括物流」もしくは「包括的な物流請負」を『3PL』と標榜しているからです。
欧米で形成された3PLと日本型3PLは、荷主との取引関係や取り組みスキームに違いが見られます。
目指すべき在り方は、共に荷主企業のロジスティクスを高い専門性や高度な情報システムによって支えることに変わりありません。
では、何がどう違うのか?
次回はその本質的な違いについて考察致します。
最後に、本年度も大変お世話になりました。
来年は東京五輪を前に、物流コンペのピーク年だと思われます。
それでは、皆様良いお年をお迎え下さい。
※3PL(Third Party Logistics)の概念は以下をご覧ください。
⇒次号に続く。