第289回 2016年は“丙申(ひのえさる)”の年(7)〜評価基準策定その4〜
不動産ファンドの手がける大型物流センターの着工・竣工がピークを迎えています。
当社の調べでは、2020年に向けて竣工する物流センターは、 関東地区で約300万坪(床面積)、 近畿地区で約100万坪(床面積)を超えています。
計画段階のものを含めると、東名阪の3地区で新設物流センターの床面積は、500万坪以上となりそうです。
一体、そんなに物流センターが必要なのでしょうか?
2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降、物流センターの賃料相場はどう推移するのか?
明らかに供給過多であることが想像されます。
投資物件としてはリターンが安定しているのが物流センターの旨味。
予測としては下げ基調ですが、どの程度の下げ率となるのかは、もう少し時間が必要です。
今や、“拠点集約”から“拠点分散”が国内物流のトレンド。
ドライバーや倉庫作業者など、労働力不足時代において、大型マザーセンターの構築はリスクの高い施策です。
国内物流戦略はまさに今、再構築をするギリギリのタイミング。
戦略を間違わないように、時流を的確に掴み、将来計画を見直すことは、全ての企業に共通する喫緊の課題です。
さて、本編は引き続き、荷主企業の物流オペレーションに対する“評価基準策定”がテーマです。
物流委託先(アウトソーシング先)を正しく客観的に評価するための「定性評価基準」を考察します。
今号は【定性評価モデル】における“物流IT力”の内容をレビューします。
ITと物流は切っても切れない関係です。
物流品質や作業生産性、在庫管理精度など全てがITによって制御され管理されます。
荷主が物流委託先に求めることは、ただひとつ。
「ローコストオペレーション」の実現ですね。
ただし、安かろう悪かろうでは困ります。当然作業品質は一定基準以上を求めます。
そこで、倉庫作業における一般的な管理指標(KPI)をひとつお伝えします。
ピース対応の物流センターにおける誤出荷率は「50PPM」が合格ライン。
「20PPM」以下はグッド、「9PPM」以下のいわゆるシングルPPMはエクセレントと評価します。
ゴルフと同様、目指すべきはシングルプレイヤーです。
では、50PPMレベルをアナログ体制で維持できるか?と言うと、出来ます。
但し、コストは割高になってしまいます。
小売業界におけるピースピック対応の物流センターでは、ハンディターミナルを使ったデジタルオペレーションが当たり前の時代です。
では、どの工程をデジタル対応とし、どの工程をアナログ対応にするのかが、「物流IT力」の優劣となります。
全ての工程をデジタル化することも可能ですが、果たしてローコストオペレーションとなり得ることができるのか?
高品質とローコスト。
この相反する二つを実現させることが、物流会社の使命です。
荷主企業としては、高品質とローコストな物流サービスが提供されているのか?を見極めないとなりません。
「物流IT力」を評価する大項目は以下の通り。
1.日次処理能力
2.在庫管理
3.マスター管理
4.ロケーション管理
5.リスク管理・信頼性
6.機能性・使いやすさ
7.効率性(サーバー負荷・処理速度など)
上記全ての項目において“高品質とローコスト”を実現できるITを活用しているか?が視点となります。
今回の物流IT力評価は、やや専門性の高い領域ですが、正しく適切に評価する視点を項目化してしまえば、標準化することが可能となります。
次号は、定性評価モデルの“配送及び配送管理力”について、考察します。