第284回 2016年は“丙申(ひのえさる)”の年(2)~料金適正化~
原油価格が驚くほど暴落しています。
WTI原油先物相場は1バレル30ドルを切る局面となり、更なる下落もあり得そうな展開。
この影響で、国内石油元売り5社はこぞって2015年度連結最終赤字と発表されています。
年始早々から株安といい原油安といい、世界経済に暗雲が立ちこめる雰囲気です。
一方で、海外からの旅行者(主に中国人観光客)が大量購買をする、通称「爆買い」は依然好調な様子。
先行きを占う意味で、来月からの「春節休暇」の動向は、注目しておきたい重要なイベントです。
2016年、物流業界はパラダイムシフトの真っ只中にいます。
荷主企業も物流企業も、全く気を許すことが出来ない一年となりそうですね。
そんな物流業界を取り巻く環境変化において、荷主企業と物流企業それぞれの立場に立った今年のキーワードについて、考察してみることにします。
まずは荷主企業のキーワード
「料金適正化」「物流戦略再構築」「評価基準策定」の3つです。
■料金適正化
2012年から始まった運賃改定運動(実態は値上げ)は、一部の大手路線トラック会社から始まり、2013年秋頃にはトラック業界全てを巻き込む未曾有のシュプレヒコールとなりました。
その結果、当社荷主企業向けアンケート調査(※)によると約5%〜10%の運賃値上げが実践され、上限は約30%という改定も見受けられました。
(※)アンケート調査の無料ダウンロードはこちらから
http://www.f-logi.com/shiryou.html
トラック輸送料金の適正化という観点からすると、ドライバー不足や労働賃金上昇といった社会現象に反応した通常の企業活動だと総括できます。
しかし、その交渉内容や料金改定手法は、これまでの荷主企業と物流企業との取引関係を真っ向から覆した「交渉主導権の逆転現象」が見られました。
多くの荷主物流担当者は戸惑い「いったいどうなってるんだ」「これから先はどう対処すれば良いのだろうか」など不安な日々が続いたかと想像されます。
1970年代のオイルショック以降、長く荷主企業優位で取引交渉が行われた物流契約は、ここ数年で一気に形勢が入れ替わってしまいました。
立場の強い方が有利な条件を引き出すのは世の常であります。
そのような状況下で改定した運賃コストは、果たして燃料価格が下落した現状において適正な価格なのでしょうか?
今、荷主企業がやるべき施策は、自社の物流調達費が適正な水準にあるのか?
市場動向を十分に鑑みて評価する必要があります。
市場水準よりも安過ぎると「継続リスク」がいずれ顕在化します。
市場水準よりも高過ぎると「競争優位」が崩れてしまいます。
荷主企業から見た「料金適正化」は焦眉の問題であり、今年中に対策を講じなければ、来年は消費税増税の波が押し寄せてきます。