第278回 物流SLM(サービスレベルマネジメント)その3
2016年、物流不動産バブルがピークに達します。
関東と近畿の二地区において、2014年竣工及び着工物件の総坪数は約250万坪。
250万坪と言ってもピンとこないので、よく比較に使われる東京ドームに換算すると、約176個分となります。
これは大手不動産開発会社と外資不動産倉庫ファンドだけの新築物件合計です。
この他にも、物流企業が独自で建築する新築倉庫や荷主企業の自社倉庫は別になります。
2020年東京オリンピックに向けて、物流業界には大きな波が押し寄せています。
荷主も物流企業も時流を読み違わないよう、慎重にかつ大胆な戦略が求めれられます。
物流SLMは締結したSLA(サービスレベルアグリーメント)を基に日々改善を進め、ロジスティクス全体の高度化・最適化を追求する活動です。
SLAで明文化される項目の中で『保管』に関するKPIは案外見逃されている内容です。
どのような商売にも、繁忙期と閑散期はあります。
在庫数量も繁忙期には増大し、閑散期は減少します。
物流アウトソーシングにおいて、繁閑ギャップの大きい荷主ほど、倉庫面積の設計に悩まされます。
物流企業にとってのベストは、最大在庫数をベースに保管坪数の設計を行うことは言うまでもありません。
では荷主企業としてのベストはどうなるでしょうか?
大半の読者の方は「在庫の一番少ない月の数量をベースに保管坪数を設計する」
と考えていませんか?
その回答は間違いです!
理由は、物流会社にとって到底受け入れられないロジックであり、繁忙期の対策が困難になるからです。
荷主企業が自社にとって最も有利となる坪数設定のベストソリューションは、やや複雑なロジックとなりますのでここでは割愛します。
ただし以下の点が最重要管理項目となりますので、学んでおいて損はありません。
1.1坪当りの保管パレット数
2.1パレット当りの積載容積
3.総SKU数
この3点が保管料を設計するうえで最も重要であり、絶対に取り決めをしておかなければならない重要なKPIとなります。
保管坪数の取り決めは、荷主と物流会社双方で、実績データを基にこれら3点を正しく設定します。
この設定に誤りがなければ、年間実績データの平均月をベースに固定坪数を決定し、増加分を上記3点を基準値として加算(増床)すれば、比較的偏りの少ない契約が実現できます。
SLMの活動項目のひとつに、上記3点のデータ観測及びオペレーション力評価があります。
この3点をしっかり押さえておくことで、繁忙期の増坪や課金に関するトラブルは回避できます。
物流SLMは、SLAで締結した物流オペレーションのサービス数値を、日々計測や
分析を行いながら最適化に向けて取り組むマネジメント手法です。
物流オペレーションを高度化するには、SLAの締結とSLMの実行は欠かすことの出来ないものとなります。