第27回 物流M&A(6)
前回まで、物流企業の価値評価には経営とオペレーション、という両面からのビジネスデューデリが重要性をもつとお伝えしました。
今号からは、企業価値 を財務の視点からどのように評価するかを、ご説明します。
「□□会社を○○億円で買収・・」といったニュースが、メディアを飾ることが 多いですね。
この金額はどうやって決められているのでしょうか?
一般的な手法を、順を追って説明していきます。
(1)アセット・アプローチ
(2)マーケット・アプローチ
(3)インカム・アプローチ
(1)アセット・アプローチは次の式で求めた金額を、企業価値とする方法です。
簿価の資産 - 簿価の負債 = 簿価純資産
例) 6億円 - 4億円 = 2億円
(資本金 0.5億円 繰越利益1.5億円)
極めて簡潔ですが、土地・設備等の固定資産、あるいは簿外債務・問題債権と いった売掛債権について、簿価に適切に反映されているとは限りません。
そこで、B/S上の資産・負債を時価に引き直して新たに価値を見積もります。
これを修正アセット・アプローチと呼び、例えば、次のように加算・減算して いきます。
簿価純資産 + 含み益 - 含み損 = 修正純資産
例) 2億円 + 6億円 - 3億円 = 5億円
(営業権1億 (不良資産2億 土地含み益5億) 簿外負債1億)
一見してわかりやすいので、M&Aでも多用される手法です。
ただし、原点に立ち返って、投資家の立場になってみましょう。
投資したビジネスが将来生み出す価値に期待するからこそ、彼らは投資を実行するわけです。
そう考えると、過去及び現在の実績である純資産金額をいくら厳密に算出しても、 将来のビジネスのゆくえを予測することは難しく、そこがアセット・アプローチ の欠点ともいえます。
次回以降、アセット・アプローチを補完する手法を、さらに見ていきます。