第263回 変貌する物流戦略その9
「荷主企業の取るべき施策」(3)
荷主企業における物流オペレーション部門に求められる知識とスキルは、以下7項目です。
- 現場遂行力(オペレーション力)
- スタッフマネジメント力(募集、採用、教育など)
- 倉庫ロケーション設計力
- 倉庫情報システム(WMS)理解力
- 輸配送マネジメント力
- 改善力
- 生産性分析力
今号は、3.倉庫ロケーション設計力について考察致します。
3. 倉庫ロケーション設計力
倉庫ロケーション設計力とは、物流拠点の配置に関して、荷主が習得しておく様々な知識と分析・設計手法のことを指し、物流拠点戦略を策定するうえで、極めて重要なスキルとなります。
企業における物流拠点戦略はマーケティング戦略と相関し、その重要性は言うまでもなく、顧客への物流サービスレベルを決定づける根幹となります。
自社にとって、最適な倉庫ロケーションを構築するには、自社の現状物流について、定性要因と定量要因の両面で可視化する必要があります。
(1)倉庫ロケーション構築における定性要因
・利用する輸配送モード
・拠点運営時間
・輸出入との関わり
・物流BCP
・拠点運営リスク
(2)倉庫ロケーション構築における定量要因
・拠点開発及び維持コスト(自社物件or賃貸)
・納品輸配送コスト
・在庫分析
・納品リードタイム
・調達リードタイム
上記の定性面と定量面の様々な要因を分析し、自社にとっての最適な拠点ロケーションを決定します。
拠点決定プロセスにおいて、最も重要な視点は大型拠点に集約化を図る「マザーセンター型」を志向するのか、地域分散型の「リージョナルセンター型」を志向するのか、戦略を持って明確に定義する必要があります。
なぜなら、これらマザー型かリージョナル型かの選択は、在庫資産への影響が顕著に表れることになるからです。
拠点数が増えれば、在庫金額も倉庫面積も増え、B/S(バランスシート)への影響(ROA、その他)、キャッシュフロー、物流コストへの影響などが考えられます。
それとは逆に拠点を可能な限り集約し、最小拠点数にすること、在庫管理難易度は低下しますが、BCPリスクが高まり、肥大化リスクも顕在化します。
上記のように、荷主企業の物流マネジメント担当における倉庫ロケーション設計力は、極めて重要な戦略を決定づける具体的なスキルとなるのです。
・・・次回に続く。