第228回 物流企業の成長戦略(1)
製造業の海外シフトが加速する中、日本の物流業(ここでは運輸業・倉庫 業を中心的 にイメージする)は大きな戦略転換点を向かえています。
荷主企業の成長に牽引され、地域やサービス内容の拡大・拡充を設備投資と重ねて図った昭和時代から、IT(情報技術)の台頭によるシステム化 されたロジスティクス概念の 浸透した平成前期時代は、物流業界図を大き く変貌させ、数々の新興物流企業を創出しました。
昭和時代と平成前期(〜平成20年)時代の物流業界構図を分類すると、 大きく以下の区分に分けられます。
昭和時代に活躍した物流事業
(1)輸送・配送事業 ・陸・空・海など各モードで、大量輸送・全国輸送を実現できる大手運送(海運)業 ・全国配送をネットワーク化した特積み事業者(路線会社)・全国に点在する区域運送事業者
(2)倉庫事業 ・財閥系倉庫を中心とした大資本型倉庫業 ・港湾サービスを中心とした輸出入物流サービス業 ■平成前期時代に活躍した物流事業(平成元年〜平成20年)
(1)輸送・配送事業 ・国際複合一貫輸送を実現できる総合物流業 ・輸配 送・保管・荷役を一体化した提案型の3PL事業者 ・低温物流サービスを全国もしくは地域で展開できる運送事業者
(2)倉庫事業 ・国際複合一貫輸送を実現できる総合物流業・輸配送・保管・荷役を一体化した提案型の3PL事業者 ・低温物流サービスを全国もしくは地域で展開できる倉庫事業者
(3)業務請負事業者 ・倉庫や車両などのアセットは保有せず、大手物流業の再委託先として、 業務請負を中心として成長した物流サービス業・物流子会社 親会社の製品物流を中心とした物流子会社が、親会社のサプライヤーやその他外部企業へ外販を行い、成長した物流サービス業と、このように各種の規制緩和により、輸配送事業者と倉庫事業社の区分 が もはや無くなってしまったのが特徴ですが、新たに業務請負サービス業 や 物流子会社の成長が著しく見えたのも、この平成前期時代のトレンドです。
欧米から伝わった3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)志向は、 本来の定義や概念が日本独自の文化や商習慣に影響され、日本型3PLへ と進化し、荷主の認知を受ける程に定着してきました。
また、物流業界におけるM&Aも本格化し、業界構造が一変するほどの事 例も発生しています。
今後、平成21年以降を「平成後期」とするならば、物流企業の成長戦略 はどのような視点で ロードマップを描くべきでしょうか?
今号から、時代の趨勢を読み間違わない『物流企業の成長戦略』を考察し てみることに します。
各々の企業が、今後5年10年後をいかに見通して的確な戦略を打ち出す べきか。
市場構造の変化に追従し、王道か差別化かニッチ化か?、どの戦略が生き残りをかけ、 成長を実現できる組織体であるのか、客観的に論述してみることにします。
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