第176回 物流アウトソーシングの落とし穴(9)~物流コストは将来コストを重視する~
■契約料金はコスト削減の始まり
物流アウトソーシングを実行する場合、既存・新規に関わらず料金=コストを重視する企業が大半だと思われます。
アウトソーシング先を選定するコンペでは、どうしても料金が重視されてしまい内容や手法が疎かになる事も少なくはありません。
自社で定めたターゲットゾーンの下限で選定できると、ある程度のの満足感が得られ、それ以上のコスト削減に目が向かないものです。
果たしてそれで十分な事でしょうか?
答えは”NO”であり、開始当初から一定期間の料金が同じ内容の企画では不十分としか言えません。
物流オペレーションとは、一定のルールを基にした作業の連続と季節波動や時間帯の集中を管理するナレッジワークに分類されます。
入荷・ピッキング・梱包・出荷作業などの物流オペレーションは、量的な変化は日々あるものの、作業そのものは決められた工程を毎日実行するルーチンワークとして継続されます。
継続したルーチンワークは標準化が可能となり、標準化された作業は時間の経過によって熟練度が高まり効率性が上がり、生産性も高まります。
生産性が高まることは、時間当たりの作業単価が下がることになり、コストダウンが実現できることになります。
基本契約が5年だとすると、1年目は立ち上げから安定に向かう期間と捉え、2年目以降が標準化の実現によって生産性が高まる期間となります。
3年目を過ぎると熟練化した作業に改善が加わり、ムダが排除されます。
この流れが物流アウトソーシングの自然の流れと考えると、5ケ年の契約期間中全て同額の料金では、本当の満足感は得られないのではないでしょうか?
■将来コストを考える
現在のベストプライスと将来のベストプライスはどちらがメリットがあるのか例題を使って説明します。
2社の物流企業から提案があったとします。
A社は現行料金よりも10%のコストダウンで5年間一定の申し出がありました。
B社は現行料金よりも5%しか下がりませんが、2年目以降毎年3%ずつ前年よりも値下げを実行する提案でした。
どちらの提案がメリットがあるかというと、答えはB社となります。
B社の場合、開始前を100%とすると5年目は84.1%となり5年間の合計コストはB社の方が安くなるわけです。
この例題は、単に数学的な考えであり現実の物流現場には多くの課題や問題点が標準化を阻害します。
一方で、標準化できるオペレーション力を持った物流企業には将来コストを下げる期待があり、共同で物流改善を実行するに相応しい企業だと考えられます。
物流アウトソーシングを実行するうえでは、目先の料金だけで選定するのではなく将来コストを考えたコスト思考が必要となります。
次号に続く。