第173回 物流アウトソーシングの落とし穴(6)~ロジスティクス・ナレッジマネジメント(LKM)~
■ロジスティクス・ナレッジマネジメント(LKM)
ロジスティクス・ナレッジマネジメント(LKM)とは、物流管理を実行するうえで、個々の社員が保有している知識や体験・情報を企業全体で共有して ロジスティクス全般の向上を図る管理手法です。
データとして直ぐに分析や試算が可能な「形式知」と個々が持っている「ノウハウ」のような「暗黙知」の2種類があります。
ロジスティクス・ナレッジマネジメントは、自社物流を続ける企業とアウトソーシングを実行する企業の両方に有効であり、業務の標準化や可視化を実行するには必ず重要な要素となります。
物流アウトソーシングを実行するうえでは、ロジスティクス・ナレッジマネジメントを事前に実施し、顕在化されている知識と潜在的な知識を明確にしておくことが必要です。
■形式知の把握
形式知は既に顕在化したもので、実績データや規定・契約などのように比較的簡単に共有化が図れるものです。
形式知は、コストの算出や不確実性の度合いを試算する場合に有効で、分析された情報はデータとして全社で共有が図りやすい知識となります。
以下、「形式知」に関する一部の例を5つ掲載します。
1)出荷実績
2)誤出荷実績
3)顧客情報
4)クレーム情報
5)料金に関する市場価格情報
■暗黙知の把握
暗黙知は、特に個々の社員や協力会社などが保有している知識を指し、その抽出を行うには、関係者全員からインタビューやアンケートなどで知識の洗い出しをする必要があります。
個々の関係者が、有効な情報・知識と気付いていない潜在的な類が多く、特に体で覚えたもの(体験)やこどばで説明しづらいものが多く含まれています。
ロジスティクス・ナレッジマネジメントの精度を高めるには、暗黙知がどれだけ多く顕在化できるかが、成功の秘訣となります。
物流担当者だけの調査ではなく、営業担当者や情報システム担当者にもロジスティクスに関する知識調査を行い、一部の人だけに隠されたノウハウや情報を全社の共有知識としなくてはなりません。
暗黙知には、企業文化や顧客の経営思想などによって創造された知識もあります。
暗黙知が明文化されデータ化されると、業務改善やプロセスの発展に大きく貢献でき、全社レベルでの改善に役立つ極めて有効な管理手法となります。
次号に続く。