第166回 ロジスティクスとインセンティブ(13)~ゲインシェアの導入事例6~
■ゲインシェア・オプションの事例
前号の引き続き・・・『ゲインシェアの設定』
荷主企業と物流企業との協業によって達成される『バリュー(改善に生みだされた効果)』を、双方が享受するシクミが『バリュー型3PL』となります。
利益相反関係にある物流委託者(荷主)と受託者(物流企業)は、市場相場に相対的な初期設定(価格・品質・精度)で業務を開始します。
しかし、そのままの条件で契約期間を満了する関係では、目に見える形での「WIN-WIN」にはなり得ないと思われます。
一般的に有料で提供されるサービスは、初期導入時に比べて利用年数や利用回数などが増加すると、何らかの優遇処置が取られるものです。
例えば、携帯電話の利用サービスですと「長期利用割引」があり、航空旅客サービスですと「マイル」が貯まりポイントとして還元されます。
物流サービスでは、この長期利用(長期契約の場合と更新による長期経過)による荷主への還元が明確になっていません。
『初期購入(新規契約)⇒長期利用⇒利用者への還元』を物流サービスに当てはめて考えると、『新規契約⇒物流改善⇒ゲインシェア(還元)』といったフローにすると、判り易いと思います。
このように『バリュー型3PL』は荷主企業と3PL事業者の両社がメリットを享受できる「ベストパートナー」の関係になります。
『バリュー型3PL』の構築には、バリューを生み出す為のシクミとなる「SLA(サービス・レベル・アグリーメント)」の導入が必須となります。
また、3PL事業者への成功報酬制度も特徴的な機能となります。
日本経済の大半が「成長期」「成熟期」から「展開期」「安定期」を向かえます。
需要サイド(荷主企業)の一方的なバーゲンニングパワーによる優位な交渉施策は終焉を向かえ、ステークホルダー全体が共通の目的を目指した協業活動にチェンジする局面です。
物流サービスにおいても、『バリュー型3PL』がその大きな担い手となることは、時代の趨勢だと筆者は感じています。