第139回 荷主企業のリスク対策プログラム(4)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

荷主企業の物流アウトソーシングにおける管理リスクには、以下の6項目
が想定されます<前号より続き>。
 
<1> 品質低下によるもの
<2> コストアップによるもの
<3> 流通形態の変化によるもの
<4> 商品形状の変化によるもの
<5> 物量の増減変化によるもの
<6> 委託先の突発的な取引停止によるもの

<2> コストアップ項目においては、「定性的な因子」と「定量的な因子」に分けて管理していきまます。

更に、荷主企業におけるコストアップリスクについては外部環境・内部環境の変化による要因も分類して管理されます。

では具体的な事例として下記のケースを参考にしてください。

〜外部環境変化による事例1〜


■委託先物流企業の配送センターが、従来は80%の直接雇用パート従業員と20%の人材派遣スタッフだったものが、人材派遣比率が30%を超えている。

その理由が、当該センター周辺に大型の物流センターが開設され、直接雇用パートスタッフがそちらのセンターへ流れている。

〜内部環境変化による事例2〜


■販売部門の意向により、受注締切時間が1時間〜2時間延長されることと
なった。

社内プロジェクトでは、時間延長よる物流コストのアップは想定されなかった

上記の事例1では、周辺の雇用環境変化が発生し直接雇用パートスタッフが取り合いとなり、時給アップが想定されます。

この事例は、外部環境変化における定性的な因子として、十分に考えられることであります。

定量的な因子としては、周辺パート従業員の平均時給が(850円〜900円)などと数値管理を行い、それが5%以上上昇することによりピッキング単価や事務経費がアップするなどとプロセス管理を行います。

事例2では、販売部門における競争優位な体制作りであり、受注締切時間を延長することにより、売上の増大・利益の向上が見込まれます。

しかし、その反面として、物流サービスは現状に比べるとどう変化するのかを想定し、コストアップ要因となるべく定量的な因子を数値化し明確にしておく必要があります。

具体的には、受注締切時間が14時だと現状の各種作業単価に影響はないが、15時を超えると、パート従業員では出荷までの最終工程に対応できず、人材派遣等の利用が増え、コストアップが懸念されます。

このように、<2>コストアップを想定したリスクマネジメンとは、より具体的な項目で、将来想定される全ての事象を予測し何がトリガー(きっかけ)となり顕在化されるかを明文化しておくと、リスク発生における対策プログラムも比較的容易に構築することが可能となります。

次号に続く。 

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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