物流業界時流2020【デジタル競争時代の幕開け】(1)安定的な物流体制の構築

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

7つの時流キーワード

2020年は時流転換期です。

2017年から荷主への逆風が強かった物流市況が、
昨年後半より凪へと変化してきました。

それに伴い、ここ数年見送りが多かった物流コンペは一気に増大し、
元請物流企業の勢力図が塗り替わる可能性もあります。

年末繁忙期のスポットトラック市況は、例年ほどの活況は見えず、
これまでの中で比較的におとなしい状態であったと思います。

筆者は2020年の物流業界時流として、
7つのキーワードに着目しています。

1.コンプライアンス遵守がもたらす影響
2.物流コストは大波から小波へ
3.デジタル化対策への巧拙
4.絶体絶命!危険物物流と冷凍食品物流
5.在庫分散によるROA悪化リスク
6.働き方改革推進による物流サービスレベルの低下
7.労働者派遣法改正によるオペレーション市況の混乱

詳細は、
弊社主催のFunai物流オープンカレッジや物流革新セミナーの中で
講演しましたので、ここでは概要のみ、お伝えします。

(1)コンプライアンス遵守がもたらす影響

ドライバーの上限拘束時間293時間/月を厳密に管理することで、
最も影響を受ける のは中長距離輸送です。

600kmを超えるワンマン運転は、
今後翌々日配達やツーマン運転にシフトされて いくと思われます。

それに伴い、運賃も上昇します。

地場配送に関しても、宵積み対応をしている場合、
翌日の朝配達が終わってから 積み込み終了までが13時間を超える場合、
朝積みやリレー方式に変更せざるを得なくなります。

(2)物流コストは大波から小波へ


ここ1~2年、運賃相場は約10%水準で上昇しました。
しかし、まだトラックドライバーの平均年収は430万円レベルであり、
全産業平均の545万円には程遠い格差があります。

ドライバー不足を解消するには、全産業平均賃金水準まで、
引き上げる必要があり、今後も3年~5年かけて約30%の上昇は不可避です。

一方で、昨年第3四半期より荷動きが低迷し貨物総量は
昨対比減少の傾向が見られます。

これにより、物流各社の新規開拓における見積もりに
変化が見られるようになりました。

既存顧客へは今の水準をキープし、新規は10%程度引き下げての提案です。

物流各社は、せっかく引き上げた料金水準を落とすことは
当然行いたくないのですが、貨物総量が減少してきた今、
新規開拓は必須となり、上場物流会社にこの傾向が見られます。

特に宅配、路線にこの動きがあり、
地場へも広がる可能性は少なくないでしょう。

中長距離の幹線輸送運賃は、今年も5%~10%上昇します。
当社の採用コンサルタントの分析によると、
地方の地場運送会社での採用は良化してきたが、中長距離・深夜配送・都心部
においては、今でも深刻な採用難が続いているようです。

夜間配送は渋滞もなく、計画通りの配送が出来るのですが、
今の若手ドライバーには不人気であり、採用・定着は困難を極めています。

2020年、荷主各社に共通のキーワードとは?

荷主各社は、自社のおかれている物流環境が今後どうなるのかを正しく
見極めて、今後における戦略を見直す必要があります。

どこに将来のリスクがあるのか?

今の課題とその先の潜在的な課題をしっかりと抽出し、
対策は直ぐに講じておかないと物流難民化する昨今です。


当社への相談で最も多いのは
「今後5年~10年間、安定的に国内物流が 維持できる体制の構築」です。


安定的な物流体制の構築とは、

①顧客配送
②倉庫運営
③在庫移動

の3点が滞ることなく、円滑に計画通りに実行できることです。

コストを下げたいと1点張りだった相談ニーズも、
今や「安定化」が荷主各社の共通キーワードとなっています。

次回以降も残りの時流キーワードについて考察します。

以上

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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