物流オピニオン 2018.05.01

今後の企業成長を担う「RPA」

1.はじめに

近年、「AI」(人工知能)を筆頭に様々なテクノロジーが研究・開発されています。最近の新聞等では毎日のように「AI」や「RPA」の話題が掲載されており、私たちの身近なものになりつつあります。そして今後、それらのテクノロジーは私たちの生活だけでなく、様々な業種・業態ビジネスにおいて、業務の簡素化や省人化に大きく役に立つとされています。

マテリアルハンドリングや各種システムによる機械・IT化が進んできている物流業界においても例外ではありません。労働人口数が減少していくなか、人でなければできない仕事以外はロボットやITに置き換えていくことが必要となってきます。しかし、本当に導入が必要なのか費用対効果を試算した上で導入検討をしていく必要があります。そのため最新の情報を常に収集し、自社に適したテクノロジーの導入検討をしていく必要があります。

そんな中でも今回は「RPA」(Robotic Process Automation)に焦点を当てて述べていきます。

2.「RPA」とは

「RPA」とはRobotic Process Automationの略称です。簡単に言い表すと、ロボット(ソフトウェア)がPC業務を自動化するという意味です。
ロボティックという言葉が入っていますが、実際にロボットがキーボードを叩いて入力業務を行うということではありません。ソフトウェアをPCに取り込むことでソフトウェアが自動的にある一定のルールに基づいて業務を行います。要するに、今まで人が行っていた業務をソフトウェアが代わりに自動で行ってくれるということです。

業務内容によっては完全自動化することも可能です。「RPA」によって置き換えられる業務は定型化された業務であり、反復かつ半永久的に自動で業務を行うことが出来ます。各アプリケーションを跨いでの業務も可能です(各アプリケーションとはワードやエクセルなどのことを指します)。

3.RPAとAIの違い

「RPA」はよく「AI」と混同し、間違えられることがあります。しかし、「RPA」と「AI」は全く異なるものです。

「RPA」

定型化されているPC業務をある一定のルールに基づき、自動的かつ半永久的に行うことが出来る

「AI」

与えられた情報や過去の実績などから最適な解を抽出し、結果を導くことが出来る

簡単に言うと、「RPA」は業務の自動化を行い、「AI」は大量なデータを分析し結果を抽出することが出来るということです。「AI」はあくまでも人工知能であるため、業務の自動化は行えません。

一方「RPA」はあくまでもPC業務の自動化を行うツールであり、分析を行うことや結果を導くことはできません。

現在「RPA」は「AI」と完全な独立関係にあり、分析・学習能力は備わっていないが、今後は「AI」の要素を取り込んだ「RPA」が開発されると想定されています。「RPA」に「AI」が取り込まれると定型業務に付随する例外処理や文字認識の精度向上などが可能になり、より高度なPC業務をソフトウェアによって置き換えることが出来るようになります。

4.RPA導入のメリット

「RPA」を導入することで以下の3点が主なメリットとして挙げられます。

(1)生産性の向上

「RPA」はソフトウェアであるため休憩を取る必要がなく、電力さえあれば24時間365日稼働可能であり、半永久的に定型業務を行うことが出来ます。

また「RPA」はある一定のルールに沿ってのみ動きます。そのため、入力間違えなどのミスを起こすことがありませんし、業務スピードも人と比べると各段に速くなるため業務効率性が高まります。人が同じ業務を行った場合と比較すると、人は連続可能な稼働時間に制限があり、ミスも起こしますので必然的に「RPA」の方が生産性は高いと言えます。

定型業務の生産性指標は処理件数です。定型業務の生産性を高めるために重要なことは正確性とスピードです。そのため、定型業務は人にしか行うことのできない思考や判断を必要としておらず、人が定型業務を必ず行わなければならないという理由はありません。言い方を変えれば、人が定型業務を行うことで思考や判断など本来発揮できる能力を活かせておらず、労働生産性を著しく低下させている可能性があります。そのため、定型業務を「RPA」に置き換えた場合、今までその定型業務を行っていた人はいなくなるのではありません。

今まで定型業務を行っていた人はまだ「RPA」や「ロボット」に置き換えることのできない非定型業務に注力することができ、会社全体の労働生産性を高めることが出来ます。

(2)コスト削減

「RPA」は初期費用が数十万円から約1千万円以上必要になるものまで幅広くバリエーションがあります。定型業務の数や難易度、複数のプロセスを介すなど様々な要件によって費用も変わってきます。ランニングコストも同様です。また「RPA」を導入するPCの台数が増えれば費用も同様に増加します。

「RPA」のランニングコストには明確な算出基準はありませんが、「RPA」は業務によっては完全自動化することができ、稼働時間が24時間365日であるため、人件費に比べるとコストを抑えることが出来ます。費用対効果や投資回収年数の設定次第では大幅なコスト削減につながる可能性が大いにあります。

当然、定型業務の中でも「RPA」導入に対してコスト削減が難しい業務も存在するため、自社内あるいは専門コンサルタント等に依頼をし、費用対効果を十分に試算・分析した上で導入する必要があります。

(3)労働人口の減少対策

昨今、人口減少に伴う労働人口の減少が懸念されています。
下記のグラフは総務省にて掲載されているものです。

(出典)2010年までは国勢調査、2013年は人口推計12月1日確定値、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果

グラフからは2013年を機に人口が減少していくと推測されており、その後も人口が増加するという予測はされていません。主に労働人口となり得る15歳~64歳人口が大きく減っていくという予測が見て取れます。

そんな中、政府は労働人口減少対策として女性の社会進出推進や、定年の延長など様々な施策を検討・実行しています。「RPA」も労働人口の減少に伴う働き手の不足を補える存在の一つです。メリット①の「生産性の向上」でも書いたように人にしかできない仕事が現時点では存在しており、「RPA」では補うことはできません。しかし、人でなくても良い仕事を「RPA」に置き換えることでその業務を行っていた人を別の業務に当たらせることができ、結果的に労働人口の減少対策になります。労働人口の創出とも言えるかもしれません。

5-1.RPAが物流業界に与える影響は

「RPA」は物流業界にも様々な部分で良い影響を及ぼすと思われます。
例えば、人手不足の解消です。現在倉庫が密集しているエリアでは人手不足が顕著に表れており、アルバイトスタッフの争奪戦になっています。争奪戦になっているということはいかに他の企業の求人条件と差別化を図るかということが重要になってきます。差別化を図るには時給を高く設定するか福利厚生を充実させるかなどする必要があり、追加コストが嵩んでしまいます。
弊社のクライアントでもそのような状況に陥っている荷主や物流会社が多数あります。

そのような状況に陥っている企業が「RPA」を導入することで定型業務を行っている事務作業員の削減することが出来ます。また、RPA導入により定型業務に従事していた方を非定型業務に振り分けることで、これまで以上にレベルの高い組織集団を形成することが可能となります。そうすることによって、人件費の削減や人手不足の対策になると同時に求人募集コストの抑制にもつながります。

一見、物流現場のどの部分に「RPA」を導入するのかイメージが付きづらいかと思いますが、以下の業務が「RPA」によって置き換えられる可能性のある主な業務です。

(1)受発注業務
(2)経理業務
(3)各種伝票入力・出力
(4)求貨求車マッチングと付随する決済業務
(5)貿易書類の作成・申告
(6)経理業務

最も大きく影響を与える具体的な業務として挙げられるのは受発注業務です。受発注業務は物流のみの業務ではありませんが、物流に大きく関わる業務の一つです。受発注業務は典型的な定型業務であり、最も重要な業務の一つです。
毎日同じフォーマットに同じルールの基、発注情報が記載されており、それを受注担当者がルーティーンで毎日受発注システムへの入力作業を行っているかと思います。
弊社にて支援している荷主にも毎日10人~12人が1日をかけて受注情報の入力を行っているような企業も存在しています。
それが「RPA」によって置き換えられたとしたら、今まで受注入力業務を行っていた人は電話応対と受注情報をスキャンしPCに取り込むという作業のみとなり、後の作業は「RPA」が全てやってくれることになります。今まで半日かかっていた業務を大幅に短縮することができます。更に電話応対やスキャン業務も、自動応答システムやOCRソフトウェアの進化によりいずれ自動化されます。その為、人はその他の業務に作業時間を再配置することが出来るようになります。

5-2.RPA事例

日本でRPAを導入している事例としては他業界と同様に経理や受発注などが挙げられます。物流事務でRPAを導入している例はあまり挙げられていませんが、ヨーロッパにて配送スケジュールをRPAにて調整、決定している事例があります。配送業者、配送スケジュールの決定をRPAに置き換えたところ入力ミスがなくなり、年間約15万件の配送に対応可能となりました。これに伴う事務作業時間約4000時間の削減に成功したとされています。
実際、日本では物流関連の事務へのRPA導入は進んでいないように見受けられます。日本では「RPA」はまだ普及し始めた段階にあるため、より定型化しやすく時間のかかる業務からの導入をしていることが要因ではないかと考えています。

6.最後に

今回は「RPA」について述べてきました。
現在、物流業界で作業の効率化や人手不足がフォーカスされている部分は庫内作業やドライバーです。
しかし、その他にも効率化を図るべき点や省人化できる業務がたくさん存在しています。
コストをかけずに効率化や人手不足を解決することは難しくなっていますが、「RPA」は初期費用が掛かるものの各新聞やニュースになっている導入各社の事例からも費用対効果が高いことが窺えます。

ただ、冒頭にも書かせていただきましたが、「RPA」であったらどこの製品でも良いというわけではありません。貴社に適した「RPA」を見つける必要がありますので、きちんと情報収集とコスト試算を行った上で導入検討をしていただければと思います。

Pen Iconこの記事の執筆者

小倉 裕太

船井総研ロジ株式会社

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