物流オピニオン 2018.04.09

物流AI~2020年代は物流業界の大変革期~

日本の物流AIは10年遅れている

2017年は国内のドライバー不足による物流危機の問題が、ついに世間に露呈し注目され始めた年となりました。物流業界では長年大きな問題となっていましたが、業界の殻を破り全産業へその情報が浸透したため、自社の未来の物流網を危惧し改善を急ぐ企業もかなり増えてきました。
アメリカの物流が日本の10年20年後の姿と言われていますが、アメリカでは既にAIを搭載したマテハン機器が食品工場や自動車関連の工場等で数多く普及しています。4GやWi-Fiの環境が現在も課題となっていますが、北米は世界のAI市場の39%を占めるほどに成長し、物流業界もまたその影響を受けています。

では、日本はAIに対してどのような意識を持ちどのような対策を取っているのか。それに付随して企業はどのような対策を取ればいいのかミクロとマクロの両眼の視点から観察・レポートしていきたいと思います。

物流AIとソサエティ(Society) 5.0

「ソサエティ 5.0」とは、ドイツが提唱する「インダストリー 4.0」に続く、日本政府が「人間(現実空間)とIT(仮想空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会の実現」として提唱しているものです。また、日本政府が5年毎に改定する科学技術基本法において、2016年~2020年までのキャッチフレーズとして「ソサエティ 5.0」は登場しました。

アメリカやドイツの場合は、製造業の生産性の向上等を掲げています。一方、日本の場合は環境やエネルギー・人口減少・高齢化等の問題を含めた「社会のあり方」を変えようとする点で他国と異なっています。但しロボットやAI、ビッグデータによる技術の革新という意味では、どの先進国も同様の軸を持ったイノベーションを目指していると捉えていいでしょう。
特に2018年には、ロボットやAIを活用したアプリ業界ではスタートアップ企業の起業と買収がヒートアップし、ビッグデータの回収において大手小売店や大手通信会社が積極的にイニシアティブをとっています。

今日の日本でAI等によるイノベーションを期待できる分野の一つが物流です。国内における人口減少・高齢化の問題から運送事業のドライバー不足、工場又は倉庫内の人員不足に派生し、AIやITを活用した省人化・無人化の未来物流の構築が企業や国に求められています。
とはいえ、不確定要素の多い技術であることや導入費用・インフラ整備・倉庫内のレイアウト事情・労働者の配置問題等によって多くの企業が新たな1歩を踏み出せずにいます。
荷主は値上げ基調により少しずつ利益が右肩下がりになるこの時に、いつどのタイミングで最新化(変革)への1歩を踏み出せばいいのか、英明な判断が求められる時となっています。

2020年代のAIと物流

日本政府全体が技術革新を大きく提唱するその中で、国土交通省は2020年までの物流におけるグランドデザインを具体的に以下のように掲げています。

・物流事業の労働生産性を2割程度向上させる
・オールジャパンの物流力を結集し物流の生産性革命を断行する
・業務、スペースの無駄を大幅に効率化し経済と産業の成長を加速化させる
・連携と先進技術で、国民の暮らしを便利なものにする

その他の具体的施策においては、ドローンポートシステムの開発、次世代海上交通システムの開発、無人搬送車等輸配送の省力化・自動化に関する取り組み、コールドチェーン(低温物流)におけるモーダルシフトを促進する中で最新の鮮度保持輸送技術の開発・普及を行なうと提唱しています。

人工知能を搭載した将棋ソフトや掃除ロボット等が登場してからAI・ロボットは数年で瞬く間に進化・開発されています。その開発スピードを加味すると、2020年には生活・仕事の両面でAI・ロボットによる無人化現象が起きているのではないでしょうか。それは、物流業界にも同じことが言えます。2018年現在はまだ、AIは「意思」や「責任」等の意識たるものを持っていないため最終的な調整はマンパワー(人)に頼っており、人とロボットの共存が求められています。しかし、2020年には完全無人化の物流倉庫が一部試稼働することが予想されます。恐らくこの無人化技術は、ビッグデータ取得のためにコンビニの無人化と同時並行で試稼働すると考えられます。

物流AIと自動運転

国土交通省によると、東京オリンピック開催の年を目途にして高速道路での一部機能の自動運転化を目指しています。今後は、技術の実践と共に法規制の整備も行なっていかなければなりません。

今、運送事業会社が事業存続のために行なわなければならないことは、自動運転技術の完成を待ち、省人化を行なうことではなくラストワンマイルという職業に魅力を持たせることではないでしょうか。「年収1千万プレイヤー」、「免許取得全額補助」、「補助員付き作業」等、様々なことが検討されます。
ある調査によれば、高収益な企業は投資する部分を明確に定め業界常識の3倍以上の投資をすることで収益に大きく反映させているという結果がでています。つまり、物流業界においても賃金・福利厚生・資産・システム・その他何か1つ企業概念のキーとなるものに3倍以上の投資をすることが他社との間に競争力の差別化を生み出し、足元の物流問題を解決する糸口になるのではと考えられます。

宅配業界ではマンションやホテル等の建物内において一部ロボットによる無人宅配業務が試行されています。このAI技術は、既に発売され普及している掃除ロボットやAI警備ロボットの機能を応用した技術となります。今後、法律の整備がスムーズに進めば、2025年頃までに無人ロボットによる人へ危害を及ぼすリスクの少ない建物内宅配の普及が期待できます。

近年ではトラックの自動隊列走行の実験も活性化し、経済産業省は2022年までに後続無人隊列走行の実現を目指すと発表しています。この一見シンプルに見える実験は、ほんの数年前から始まったものではありません。2008年頃から製造業・メーカーが段階を踏んで様々な実証実験を行ってきた賜物なのです。10年という年月を考えると相当のビッグデータが構築されていることが予想され、早急な普及に期待が持てます。

物流業界のAI導入事例

日本において実践的に投入されているAIの技術は、運用サポート、販売・営業サポート、製造・物流、人材管理等が挙げられます。
しかし、実際にそれらを導入している企業は数少なく、事例も多くはありませんが少しだけ紹介したいと思います。例えば、物流業界における事例は以下のようなものが挙げられます。

倉庫内のピッキングの際に回転率のいい商品のスペースで渋滞が起こり、作業が滞る問題がしばしば発生しますが、AIを導入することでこの作業順を最適化し、作業者の生産能力を向上させるといった事例です。

このように、物流業界においてAIは頭脳、ロボットは現場作業に活用され始めています。いずれもプログラミングとディープラーニング(深層学習)によって稼働しているものであり、人でなくてもできる作業においては省人化、人より早く計算や処理ができるものにおいては生産性の向上に繋がっています。

物流業界でAIの導入が期待されるワケ

ではなぜ、物流業界ではAIの導入が期待されるのでしょうか。
一言でいうと、AIの導入によって生産性向上・コスト削減・誤作業防止・採用/教育業務の逓減等が実現できるからです。
2016年の車両一台当たりのドライバー数は約0.7人となっており、運送事業会社はドライバー不足で車両運行ができない状態となっています。また近年では、倉庫内の作業者不足も起こっており、作業者の補助員として自動追従ロボットや無人AIロボットの導入事例等も見られるようになりました。物流企業にとっては労働力を集めるために、他社に負けない様なより競争力のある賃金を提示しなければならないため、人件費や労務費、販管費に相当なコストがかかっています。賃金を引き上げるために金融機関から融資を受け、それでも人が集まらず、廃業する企業も近年はみられます。

運送事業会社が減少すれば、荷主企業も必然的にサービスや商品の提供、事業の展開が苦しくなり負のスパイラルが発生します。AIやロボットの導入は、初期費用は相当かかるものの、人件費の大幅な削減につながり、長期的にみるとAIを導入しないケースの年額のトータル物流コストと比較すると大幅なコスト削減が可能になります。そして、人手不足によって引き起こされる生産性の低下、売上の減少を防止すると考えられます。現在のAIやロボットのメリットは、単純作業であれば人的ミスの防止や作業スピードの向上も期待できます。
 
他にも、AIやロボットによって置き換えられる物流業務としては、センター内の単純作業になるでしょう。また、近年は緊急出荷の要請や臨時の配車要請が後を絶えません。ここにAIが搭載されていれば、予測情報や自動配車によって、倉庫作業者や配車マンが毎日プレッシャーで疲弊することも、戸惑うこともなくなります。物流サービスレベルの向上や労働環境の改善にも繋がっていきます。
 
しかし、AIやロボットが全ての作業を代行できるのかというと、もちろんそれはあり得ません。一定の単純作業をAIやロボットに任せることで生産性向上と誤作業の防止が可能になり、余剰となった人員をマンパワーでしか成立しない作業工程に注ぐことができるという部分に期待とメリットがあるのです。
つまり、マテハンやロボット、運搬系のAIは、最も効率的に省人化を図れる可能性のあるものです。だからと言って、AIやロボットをむやみやたらに導入することは賢明とは言えません。現在の自社のおかれた状況、優先して改善していくべきことを正しく把握しながら、判断することが求められます。

物流AIが当たり前になる未来

現在開発されている様々なAIは、現在の物流問題に対する継続的改善の手段として受け止めたほうがいいでしょう。理由は「AIの新時代が来た」と言える様な破壊的なテクノロジーは未だ無いためです。そして恐らく誰もがぼんやりと想像しているように、完全無人化の商業施設や物流倉庫の稼働、発展したAIが搭載された家具家電と共に暮らす世界が2035年頃には当たり前になっているかもしれません。
その点を踏まえて、人とロボットが共存する現在においてまず導入すべき最適なものは、AI搭載の教育システムではないかと考えています。人×ロボットの共存する業務の標準化を行うためには、教育のフラット化を進めることが最適解と言えます。また教育のAI化を行うことで新入社員への教育に係る工数も大幅に削減可能となります。

AI開発者は日々絶えず研究を行っているため、我々がAIの時流からほんの少し目をそらすだけで気が付けば驚くほど技術が進歩しているという驚異的スピードを持っていることを再認識しなければなりません。「今はまだ導入しない」たとえこの判断がその瞬間は正しいものだとしても、ではその「今」とはいつまでの期間なのかを確りと定めるべきではないでしょうか。企業毎の現状やマーケットによって変革の時期を見極める基準というものは変わってくるでしょう。自社の物流体制大変革のタイミングはすぐそこまで来ています。

おすすめ情報

ダウンロード資料/荷主企業のマテハン導入・デジタル化に関する調査2020年

概要
物流業務の効率化、省人化を進めるべく、AI・ロボット・自動化を導入または導入を検討する企業が増えています。物流業界の自動化およびデジタル化の取組み実態に関する調査レポートです。”
  
  
詳細
https://logiiiii.f-logi.com/documents/reserch/matehandigital2020/

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Pen Iconこの記事の執筆者

井上 輔

船井総研ロジ株式会社

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