宅配で急成長している時流企業インタビュー -ラストワンマイルのプロ編-
ドライバーのあるべき心構えと新人育成のコツ
はじめに
各社がラストワンマイルの人材不足に悩む今日、今回は現場で働く人の声を聞くべく、1日200件以上の配達を実現しているドライバーなど、優秀なドライバーが集う株式会社吉祥寺総合物流の二瓶直樹社長・阿部拓也営業本部長にお話を伺いました。
同社は今後全てのドライバーが持つべき心がけや教育・配達のコツ、物流に関わる全企業が知っておくべき最新時流・信念・ルールを大切にしながら業務に取り組んでいます。 現在、特にラストワンマイルの配達において都内全域で活躍され、ラストワンマイルの価値向上を目指して躍進なされています。荷主企業からの案件数が日々増加する中、ダイバーシティに適応した採用で、ドライバー数も増加しています。
彼らの活躍にはいったいどのような秘訣があるでしょうか?


配達を自ら行いながらラストワンマイルの新人ドライバー育成
現在の業務内容について教えてください
〈阿部本部長〉
「現在はプレイングマネージャーとして、自ら軽ワゴン車で配達する時もあれば、会社の事務所で仕事をする時もあります。具体的には週に3~4日程、自ら軽ワゴン車に乗り個人宅配達員として活動しています。その他にも営業本部長として営業活動やドライバーのサポート・教育といったマネジメント業務も行っています。ドライバーのサポート業務では、特に新人ドライバーに同乗するなど、OJTで新人教育を行っています。」
アルバイトで初めて関わり、「好き」を活かして宅配業務を始めた
現在も時に1日約200個の宅配を行っている阿部様ですが、どのような経験を経て現在まで至るのでしょうか
〈阿部本部長〉
「宅配業は25歳の時に始めました。初めて宅配に携わったのは大手宅配会社の宅配業務でした。当初は7月限定で繁忙期のアルバイトということで仕事を始めました。短期のアルバイトのつもりでいたのですが、そこの所長さんから「引き続き残って、うちの社員として働いてほしい」という話を頂きました。もともと地図を読むことが得意だったこともあり、配達の仕事が好きで運ぶことにやりがいを感じていました。その仕事をする前もバイク便をしたり、デリバリーの配達をしたり、他の人は1日約30~40個配達するところ、気がついたら僕だけ100個以上は配達していたこともあります(笑)。
しかし社員としてしばらく働くうちに、物流業界の変化で集配先が減ってきてしまい、ドライバーとしてのやりがいが減少し、インセンティブが減ってくるという状況に直面しました。この状況は、正直やばいと感じていましたね。そんな時に同僚から、大手宅配会社と業務委託契約をして個人事業主として一緒にやらないかという誘いを受けました。これは面白そうだと思い同僚の誘いを受け、3名で個人事業主として宅配を始めました。起業後はトラック10数台、ドライバーも20名程度まで大きくなっていきましたが、その後は運送単価や事業方向性等の面で各人の方向性が異なるようになってしまい、一度全てを見直すことにしました。
そこからまた一人で宅配の仕事をやっていこうと大手ECのネットスーパーの仕事を受託し、配達の仕事をしていました。そこで出会ったのが吉祥寺総合物流社のベテラン女性ドライバーでした。その繋がりでたまたま二瓶社長にお会いしてお誘いいただき、約半年後に入社しました。それで、現在に至ります。」
二瓶社長と阿部本部長は偶然の出会いだった?
<二瓶社長>
「そうですね。取引先の仕事をしていると現場で色々なドライバーと一緒になることがあります。その中で、当社のベテラン女性ドライバーから「社長!すごくいい子がいるから会ってくれない?」と紹介を受けたのが今の阿部本部長でした。その後、彼がニコニコして会いに来たのを覚えています。そこで感じたのは「答えは現場にある」ということでした。机上の空論は本当の答えではなくて、色々な現場に行くことで答えや成功のきっかけを見つけることができると今でも感じています。そこで僕は、阿部本部長というとんでもない宝物を現場から頂いたと思っています。「運」というのは足を運ばなければつかむことはできません。」
運送業ではなくサービス業の心
ラストワンマイルの宅配における考え方、心がけていることは?
〈阿部本部長〉
「宅配の仕事は、ただ配達するだけではないと思っています。宅配業は配達した先に受け取る人が待っていて、もはやサービス業と言えるからです。なぜサービス業と言えるかというと、受け取る方の性格は十人十色、どのようなミスでお客様の機嫌を損ねてしまうか全く分かりません。なので、どんな時もお客様に対して笑顔でいること、印象のいいドライバーであることが大切だと僕は考えています。常にお客様と良い関係を作っていると、こちらのミスを許してくださることも多くあります。日頃からドライバーが不愛想でお客様と良い関係を作れていなければ、些細なミスでもクレームを入れられてしまいます。そのような悪循環に陥らないために日頃からお客様にとって気持ちのいいドライバーでいることが必要な心掛けだと感じています。 しかし、中には「笑顔を作るのが難しいです」というドライバーもいます。そのような人でも、できるだけ不愛想にならず印象よく仕事ができるように教育をしています。
この仕事では失敗は必ず起こります。自分のせいでなくても、物流全体の流れに影響され時間指定に間に合わないことなど、全体的な要因でお客様に迷惑をかけてしまうことが必ずあります。それでもお客様は全体の流れを知るに知りえないわけですから、ラストワンマイルのドライバーに責任があるのではと感じてしまいますよね。その時、日ごろからの対応や態度をドライバーがよくしていれば許して頂けるケースもあります。常に、そのようなサービス業意識を心掛けるというのがラストワンマイルでは大切なんじゃないかと思っています。」
近況や悩み、疑問や思いを聞く
配達業務は精神的に強いものが求められると感じますが、新人ドライバーのケアはどのような事をされていますか?
〈阿部本部長〉
「新人ドライバーは入社して1ヶ月程経過すると沢山の疑問や質問が出てきます。この時に適切な答えや指導を行うことが教育という面での僕の義務であると感じています。心がけていることは2,3ヶ月ペースでドライバーと直接会う機会を作りコミュニケーションをとることです。もし会えない場合は電話などで彼らの近況や悩み、疑問に思うことを聞くようにしています。
先日も15名ほどのドライバーと集まって2時間ほど日頃の仕事に対する思いの丈をぶつけてもらいました。その場で挙げられた助言や意見を集約して全体最適で改善と成長を促すことが僕の役目だと思っています。弊社の営業所は各所にあり、弊社の社員はオーナードライバーとして独立している方々なのでなかなか会えない方も多く、会う機会を意識的に作るようにしています。
また、全てのドライバーと常に僕がコミュニケーションをとることは難しいので弊社ではチームリーダーを各所に配置し、ドライバーの声が確り経営層に届けることができる体制と環境を作り上げています。」
信頼と実績からなる価値のあるドライバーを育成する
ドライバー同士の情報共有を3ヶ月に1度行っているのはどのような理由がありますか?
<二瓶社長>
「完了報告<報連相>は毎日の義務としてLINEで全員から報告して貰っておりますが、毎月情報共有の場を作っているとマンネリ化してしまいます。なので、3ヶ月に1回が一番良いペースだと考えています。但し、このドライバーの集まりに加えてマネージャー会議は毎月行っています。
阿部本部長も含めて現在6,7名いるマネージャーは経営スタッフとして毎月の情報を共有してもらっています。 当社の阿部本部長は現場では「あべちゃん」とよばれる人気者です。集荷に関しては当社の関与する部分ではないのですが、お客さんから「商業貨物も手伝ってほしい」と要望があっても、嫌な顔を一切せずに引き受けるのが阿部本部長です。商業貨物はお客様からよっぽど信頼を得ていなければ扱えないものですからね。
このような信頼関係もあり彼は1日最多300件の配達をしたという記録を持っています。普通のドライバーでは、なかなかこの記録は超えることができません。また、価値のある配達は簡単にはできないと思っています。「精神力」と「イメージ力」が宅配には必要ですね。彼が特に優れているのは「イメージ力」です。地図が頭の中に入っていますし、その家の家族構成までも頭の中に入っています。だから、配達先のご家庭に何時に行けば人がいるかということもイメージして配達することができます。普通の人にはこれがなかなか難しい。そのような価値ある配達は、おそらく簡単にはできないでしょう。」
阿部様の実績と信頼が、御社の既存ドライバーの定着グリップに繋がっていると
<二瓶社長>
「そうですね。阿部本部長を含めマネージャー陣は現場に足を運び仕事の状況を聞いたり、時には現場のドライバーと飲みに行ったりなど積極的なコミュニケーションをとっています。細かい気遣いのおかげで若年層のドライバーが長く続いてくれています。タイミングが合わず、なかなかコミュニケーションをとれないドライバーとは個別に連絡をとって話を聞くなど気遣いを怠っていません。阿部本部長を含めて経営陣は、縁の下の力持ちとして動いてくれている部分が多いですね。
また、すぐに覚えようという気持ちが大切です。阿部本部長の新人教育の方法は「見て覚える」という方法です。いつも新人には「見て覚えてください」と言っています。そして、2日目には反対に、新人さんにやらせてみて「わからないことがあれば何でも聞いてください」とサポート役に回る。昔、山本五十六が言っていましたが、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めて見せれば人は動かじ」という言葉そのままの教育だと思っています。なかなか自分では言えない部分もあると思うので僕が自慢しておきます。」
見て覚える、とは言え段階的に覚えていけばいい
ドライバー教育において工夫されている点を教えてください
<阿部本部長>
「本当は教える側も、一気に教えたいと思っていますがこれはなかなか難しいことです。宅配は単純に考えればA→Bへ荷物を運ぶだけです。でも実はその運ぶ間に、やらなければならない細かな業務が100とあります。これを一気に教えるのは非常に難しいので「初級編」「中級編」「上級編」と僕の中でSTEPを分けて教えています。
また、そのドライバーのレベルに合った内容の教育を行うようにしています。まだ配ったことが無い新人ドライバーに「質問はある?」と聞いても「何を質問したら良いかすら分からない」という状況になります。大抵、仕事を続けて1,2週間で質問が山ほど出るようになります。その時に「初めの2週間で生まれた疑問点をまとめておいてね。」といつも伝えています。」
人生で1度だけ、2週間の我慢をしてほしい
新人ドライバーが宅配個数を伸ばすために心がけるべきことは何ですか?
〈阿部本部長〉
「僕が新人さんに必ず伝える言葉は、「人生で2週間だけ我慢をしてほしい」というものです。この2週間はスポーツで言うと筋トレ期間だと思っています。収入がある筋トレ期間ですね。(笑)
2週間以上経つとドライバーは少しずつ地理感覚が身についてきます。そうすると、宅配では配達担当エリアがおおよそ決まっていますので、住所や配達先の名前を見るだけで道がわかるようになってきます。配達業務に加えて再配達の依頼で電話がかかってきたり、メールが届いたり新しい環境で混乱することもあります。
また、精神的にもつらいことも多いかと思います。しかし初めの2週間を超えれば、それらの負担が殆ど無くなってくるので、2週間だけ我慢してほしいと伝えるということです。今、直面している課題を少しの間我慢することで自然に仕事を覚えていき効率の良い配達ができるようになります。」
ドライバーは地域の顔
<二瓶社長>
「そういった意味で我々ドライバーは町の顔ですから、とても神経を使います。町を走っていると町の方から手を振られます。僕は相手の顔がわかりませんが、向こうは毎日来るドライバーの方だということで顔を覚えてくれているんです。みんな自分のことを知っているので言動に注意して稼働しなければいけませんね。
10年くらい前はそのような意識やモラルを持ち合わせていないドライバーも宅配業界には数多くいたので、一部のドライバーの振る舞いによって業界全体のイメージが悪くなるのは気持ちがいいことではありませんでした。今はそのようなドライバーは減ってきてはいますが、そのような方もまだいます。自分たちからそのような意識の改革を行って変えていかなければなりません。宅配業を行っている人たちに「自分たちは地域の顔であり、とても重要な仕事をしているんですよ」と伝えてあげたいですね。」
<阿部本部長>
「確かに、そのような態度は自分の首を絞めるだけですからね。各ドライバーが担当している地域は自身の稼ぎ場所です。そこで悪い態度をとってクレームにつながると、その地域では仕事ができなくなるわけですから。その地域で働いて、自分は地域の顔なんだという意識をもっておかなければラストワンマイルの仕事は成功し続けることが厳しくなると思います。」
情報共有がドライバーを成長させる
ドライバー一人だけで仕事をしていると自分の行動が良いのか悪いのか判断基準が難しくなるようにも思えます
<阿部本部長>
「そうですね。一人で配達しているとなかなか良し悪しに気づきにくいですね。なので、ドライバー同士の情報共有を行っていくことで、自分の行動を振り返るきっかけとなり良し悪しを判断できるようになります。情報共有がなければ、たとえ悪い行動をとっていたとしても気づかないですから直すことなくそのまま仕事をしてしまいます。そうした点でも情報共有は大切だと感じています。宅配業を行っているサービスプロバイダーの皆様も会社単位で情報共有を行ったほうがいいのではと思います。」
1日200件配達のコツ・再配達/人材不足のベストな対策
宅配はツラいが、色々な面でやりがいがあり続けられる仕事
配達業務は精神的にも体力的にも大変な部分があると思いますが、それでも続けることができる宅配のやりがいはどのような面ですか?
〈阿部本部長〉
「個人向け配達においては宅配やネットスーパーなどの様々な配達種類がある中で、宅配は最も労働時間が長くて頭も使うツラい仕事だと感じています。しかしその分、ドライバーとしての収入は非常に高い水準だと思っています。
反対にネットスーパーの配達は自分のペースで配達ができます。例えば、夕方までに配達を終了させて夕方からは自分の時間をとるということも可能です。
稼ぎたいという人であれば宅配、収入よりもワークライフバランスを重視したいという人であればネットスーパーの配達を選べば、自分に合った体系で働くことができます。それぞれの意思に合った働き方ができ、それぞれが思うやりがいに繋がる体制ができていると思います。
また、人と人が繋がることができる仕事という面でも大変やりがいがあると感じます。配達しながらお客様と仲良くなってお話をすることも自分のためにもお客様のためにもなり、Win-Winの関係を築ける機会だと思います。そう言った面でも、ツラい事ばかりではなくとてもやりがいのある仕事だと思います。」
初めからは難しい、とにかくやってみるしかない
宅配個数を1日100件以上回ることは誰でも可能ですか?
<阿部本部長>
「正直、新人ドライバーが初回から配達個数を増やすことは難しいと思います。初めの期間は1日30~50個を配達できれば良い方ではないかと感じています。そもそも配達個数が増加しない理由の一つは配達エリアの地図が頭に入っていないことが挙げられます。地理が曖昧なことで、配達地到着までの時間がかかってしまいます。
どのように地図を覚えてもらうかというと、とにかく「やってみるしかない」ということを常に皆さんに伝えています。経験を長年積めば全ての配達先がそのような感覚になってくるので、結局は「場数を踏むしかない」「やるしかない」ということだと経験上、思います。僕の体感では初め地図を見ながら配達していたドライバーも、1ヶ月ほど経つと地図を見ずに配達できるようになっていきます。」
集配エリアによって配れる個数も変わる
やはり住宅密集地が有利?
〈阿部本部長〉
「そうですね。ただ、そもそも大手宅配3社でシェア率が違ってきます。また、各社配達エリアの距離も異なってきます。同じ100個の配達を行うにしてもA社では配達エリアが密集しているので短時間でできますが、B社、C社であればより配達エリアが広くなっているので時間がかかってしまいます。配達個数を増やすためには配達エリアが密集している仕事をもらったほうがたくさんの配達ができます。また日本の宅配業では、首都圏とその他の地域ではやっていることは同じでも全く別ものだという印象をもっていますね。やはり集配エリアの違いが一番大きいです。首都圏ではバス停集配といわれるほど近距離の集配になりますが、その他の地域では一日200kmくらいの距離を走っているとよく聞きます。1件行くのに1時間かかるという話も聞くのでもはやそれは宅配ではなく、ネットスーパーに近いものなんじゃないかと思います。」
慣れと真剣さが配達効率を生み出す
〈阿部本部長〉
「次に仕事を覚えてきたら配達時間短縮のため、さまざまなコツを伝えていくようにしています。例えば、オートロックがある1棟のマンションで複数の配達先がある場合を考えます。数件インターフォンを押していきますが、不在の方がいらっしゃる場合もあります。1件目が不在、2件目を配達して、3件目も配達した後に郵便受けの近くで不在票を書いて入れる、というのが一般的な流れかと思います。しかし1件目が不在である場合、不在票は後回しにするのではなく2件目に行くエレベーターの中で不在票を書くことで、郵便受けの前で書く時間が30秒から1分くらい時間短縮されます。この少しの時間短縮のコツを積み重ねることで一件当たりの配達時間が非常に短くなります。このような細かな工夫を行うことで僕は大量の配達を行うことができています。
このような細かなコツやノウハウはドライバー各人で異なっています。なので、3ヶ月に一度のペースでドライバーの集まりで各人のコツを共有する場を設けています。ほかのドライバーのコツを聞くことで配達効率が高まることにも繋がっています。」
再配達を無くすには、受け取り手の意識改革も必要
今後のラストワンマイル・再配達に対しての懸念点はありますか?
〈阿部本部長〉
「再配達でなかなか受け取ってもらえないという現状がありますが、その原因は受け取り手の意識問題もあると思います。受け取らなければいけないという意識が低くなっている、ということです。昔はECによるB to C配送は無く、親や友人が送り主に対して送るC to Cの荷物が主でした。親からの仕送りや友人からのギフトに対しては「必ず受け取らなければいけない」という意識が強くありました。しかし、ECの登場により「物を受け取る」行為がゴールでは無くなりインターネット上で自分が「買う」という行為がゴールとなっている現状が見受けられます。例えば、楽天のネットスーパーで購入したときにポイントが付きますが、そのポイントが付くことで満足してしまい、消費者の方は買った荷物が届くことを疎かにすることがあります。
お届時不在票がポストに入っていたとしても、その荷物が今必要ではないことが多いので「後でいいや」という意識になってしまいます。そうなると、ドライバーに連絡がこないので何度も再配達したり配達するのが遅くなったりしています。たとえ宅配boxができたとしても、消費者が受け取らなければいけないという意識を根付かせなければ、再配達問題は根本からは解決しないのではと感じています。
また、再配達の発生の要因として無駄な時間指定があることも問題だと感じています。通販サイトによっては、日付指定がなく時間指定だけあるケースがありますが、日によって受け取れる時間帯は違うでしょうから必ずその時間に受け取れるとは限らないと思います。それであればドライバーがその町の事情に一番詳しいのだから、時間指定なんてやめてドライバーが知っている情報の中でいつ配達するのかということをドライバーに任せることが僕は一番良いのではと思っています。
僕が配達現場で経験したことですが、ある親御さんが息子に荷物を送る際に夜しかいないだろうという親の思い込みで夜間指定をされることがありました。しかし毎回夜配達に行くものの一度も家にいたことがありません。そしてその息子さんは不在票が入っていると、次の日のお昼にコンビニで荷物を受け取るんです(笑)。それがわかっているのであれば夜ではなく午前中に不在票を入れて置けば、その息子さんは更に早くコンビニで受け取れるようになります。夜、不在票を入れるとどうしても次の日の受け取りになりますから。
そういった送り側の「この時間だったら受け取ってくれるんじゃないか」という思い込みは、特に気を付けるべき時代になっていると感じます。これはECの発展において更に深刻化するのではと感じますが、細かなサービスをすればするほどややこしくなってしまいます。」
新しいドライバー候補は外国人
ドライバー増員の為に積極的な採用をされていますが、どのような工夫をされていますか?
<二瓶社長>
「採用はおこなってはいますが、そもそもドライバーが少ない国内では限られています。10年後には25万人マイナスになる状況がありますので、ポテンシャルワーカーの訴求しかないですね。当社でも中国福建省出身のドライバーが13名います。また今後も増員の予定もあります。
当社ではリーダー陣で月に一度会議を行ったり、飲み会やBBQをやったり、セミナーに参加させたりしています。基本的には人材に使うお金は「生きるお金」だと思っているので惜しみなく使っています。
中国福建省の人たちは経済格差が激しくあるんです。富裕層と低所得者が二極化していて、中間層が少ないんです。その中で富裕層の子供たちが中国の日本語学校を卒業して日本に来ることが多いという協力会社の社長さんからお聞きしました。しかし、日本人の基準からするとマナーが悪い人が多いという印象を持っていますね。あとはビザの関係で労働条件が細かく決まっているんです。例えば個建ではなく、車建でなくてはいけないみたいなことがあります。そういう方々でも採用したいと思うほどにポテンシャルワーカーは必要なんです。外国人、女性層、シニア層を取り込んでいかないと2025年以降は生きていけないと考えています。」
今後は女性ドライバーも増やしていく
女性ドライバーは在籍されていますか?
<阿部本部長>
「今はいないですね。過去にベテラン女性ドライバーがおりましたが、現在は休職中です。今後のダイバーシティも考慮した上で積極的に女性ドライバーを採用したい思いは強くあります。しかし宅配は固定時間拘束の業務が多くそう簡単には募集できません。
現在は女性の希望労働時間に関して情報収集をしていますがやはり家庭をお持ちの女性は、家事や育児の関係で9時から15時まで働きたいという方が多いですね。反対にそのような時間帯での仕事を我々経営層が調整できるように尽力すれば家庭を持つ女性の方でも安定収入で楽しく働けるようになると考えています。」
女性ドライバーが働きやすい環境づくりが必要
主婦層等女性への配慮に関して考えていらっしゃることはありますか?
<阿部本部長>
「やはり働く時間が決まっているという点でしょうか。夕方までには帰って夕飯の準備など家事をしなければいけない、朝も子供のお見送りがあるので早朝の出勤はできない、ということだと思います。そのような方々の働く場所を提供したいと考えています。そのためには会社として働き方の改革が必要です。例えばその時間だけ働いてもらい、15時以降は他の方に仕事を引き継ぐという仕組み作りが必要だと感じています。そのような構想を模索していますが、特にネットスーパーの仕事ではその時間体系は難しいですね。荷受けする店舗側からすると複数のドライバーが出入りして複雑になるより、一人のドライバーにやってもらったほうがいいという声をよく伺います。そことの折り合いが難しい状況にあります。」
収入面での魅力づくり
9時から15時まで働く中で、主婦層の方は収入面もやはり気にされるかと思います
<阿部本部長>
「単純に時給換算して時給1,000円だとして、1日5時間労働で5,000円。約5,000円/日の収入になると思います。パートとしてもそこまで低くはありませんので収入面での魅力はあると思います。もともとその地域の土地勘があり、地図が読める方であれば宅配業はうってつけだと思います。地図が必要な時期は最初だけで、あとは配達に回るルートも決まってきます。」
配達個数を求められる仕事は、女性には大変だという印象はお持ちですか?
<阿部本部長>
「やはり、荷物の種類が大中小ありますので、どうしても女性の方で持てない荷物が出てくることもありますね。そこは一人で行う仕事ではないので、パートナーと組んで協力し合いながら二人で持ったり、持てる荷物だけ担当したりする仕組みは我々が考えていかなければいけません。」
人とのつながりこそが最大のやりがい
最後に伝えておきたいことはありますか?
<阿部本部長>
「世間ではこの仕事はツラい職業と言われてはいますが、人と人がつながれる仕事であるので非常にやりがいがあると思います。配達しながら配達先の人と仲良くなって、お話することも自分のためにもお客さんのためにもなる。その関係づくりが楽しいと感じています。そこに収入もついてきて、とてもやりがいのある仕事ですね。」
<二瓶社長>
「物流企業に限らず、組織にとって一番大切なものは「企業理念」と「コミュニケーション」に尽きると考えています。その中で、私は日頃から「地域貢献」「社会貢献」「職業貢献」の『志』が一番大切な心構えと常々考えております。その『志』が無ければ、真の「達成感」は得られないと考えているからです。また、弊社は人を大事にしたいという思いが第一ですので、人を大事にして皆で楽しくして行けたらと思います。後は何事も“凡事徹底”。弊社の企業理念は「半ばは自己の幸せを、半ばは他人(ヒト)の幸せを」です。これからも人を当たり前のように大切にしていきますし、そうすべき時代だと考えています。」
取材後記
二瓶社長・阿部営業本部長にお話を頂いた中で、最も重要なポイントは「宅配業界の問題解決の為には送り手・受け手両方の“意識改革”が必要である」という部分ではないかと感じました。現役ドライバーも兼ねる阿部営業本部長からも非常に明るい印象と力強さを感じ、二瓶社長からはラストワンマイルに対する強い思いを頂きました。「ラストワンマイルはサービス業」、この意識が業界全体に広がれば同社のような企業を起点とした、業界を一変する〈宅配〉の新しい姿が生み出されるかもしれません。今後の活躍も非常に楽しみです。
吉祥寺総合物流さんは、当社が主催するロジスティクスビジネス経営研究会メンバーであり、ラストワンマイル部会の主軸メンバーです。二瓶社長の経営姿勢及びビジネスモデルは他の会員さんにも多大な好影響を与え、私がとても尊敬する社長のお一人です。 業界では、ラストワイルにおける人材不足に悩む中、吉祥寺総合物流さんのような時流のど真ん中を進む企業さんがもっと現れることで、現下の課題解決に成り得ると確信しています。 この取材記事を読んでご興味を持たれたラストワイルに悩む荷主企業の方、どうぞお気軽に小職へお問い合わせ頂ければご紹介致します。
今回取材させていただいた企業様

株式会社吉祥寺総合物流
- 本社営業所
- 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-31-11 KSビル
- 創業
- 平成16年4月
- 代表取締役社長
- 二瓶 直樹
- コーポレートサイト
- http://kissyou-exp.jp/

