採用特化型ホームページの作り方
物流コストの高騰や、それに伴う製品/サービスの値上げの主たる原因の1つが、「人手不足」です。
少し経済学的な観点で説明をすると、物流サービスの市場価格上昇は、物流サービス供給量よりも物流サービス需要量の方が大きい場合に発生するため、物流企業にとっては、「仕事はあるけれども、人手が足りていないためにこれ以上請けられない」 というような状況であると言えます。
このような状況が続くことで、物流企業にとっては「もっと人を採用すれば、もっと売上を伸ばすことができる」という心理が働くので、さらに人手に対する需要が高まり、「人材争奪戦」がより激化していきます。
物流業界(大半がドライバー職)の有効求人倍率は、2019年現在、およそ3倍ほどだと言われており、超売り手市場の求職者にとっては、「入社させて頂く」という感覚から、「この会社なら入社しても良い」という感覚に変わっているということを理解するべきだと言えるでしょう。
物流企業がこの人材争奪戦の時代を生き抜くポイントは、ズバリ「差別化」と「正しい情報伝達」です。この点において、採用に特化したホームページをきちんと整備することが有効な手段の1つとなります。
本稿では、採用特化型ホームページに的を絞り、
・なぜ採用特化型ホームページが必要なのか?
・物流企業の効果的な採用特化型ホームページの作り方
を紹介していきます。
1.なぜ採用特化型ホームページが必要なのか?
従来の採用の常識(ゲームルール)といえば、ハローワークやフリーペーパー、大手求人メディアへの求人票の出稿である程度事足りていましたが、物流需要増や人手不足といった状況の変化によって、当然今までの採用の常識が通用しなくなってしまっています。
そんな「ルールが変わってしまった」状況においては、新しいルールを理解し、いち早くそのルールに適応しなければなりません。そして結論から言うと、採用の常識は、「掲載」から「運用」に変わっています。その背景を説明しましょう。
「応募数≧募集数」の世界:従来の常識
この時代は、端的にいえば求人媒体に「求人票」を掲載すれば人が集まる時代です。
求職者にとっては、仕事があまりないので、何社も比較検討をしている余裕はありません。
企業側は、応募者の能力や将来性について「見極める」側です。
「応募数<募集数」の世界:現在の常識
「求人票」を出してもなかなか人が集まらないのが昨今です。
求職者にとっては、選択肢が多くなるので、当然どちらが良いか比較検討をし、良いと思った企業に応募します。かつ、求職者は複数に応募して選考中にも「見極め」ています。
こうなると、ただ求人票を掲載するだけでは成果はあがりません。求職者にとってその時そのときで「良い」と感じてもらえる内容を適切に伝え続け、選考中も求職者の「惹きつけ」を行い続ける必要があります。求職者自体の行動の大きな変化といえば、スマートフォンのスタンダード化による比較行動の変化です。
インターネット上のホームページ情報が持ち運べる(モバイル化)ようになったことで、ホームページ情報がより手軽になり、 求職者の比較検討のレベルがより進むようになりました。合同説明会で、会社紹介を聞いて回る就活から、自宅のソファーで寝ころびながら自分に合いそうな会社の情報を見て比較する就活が主流になっています。会社の情報とは、求人媒体の掲載内容はもちろん、「会社のホームページ」や「評判サイト」などにあたります。
求職者の比較検討レベルは、求人内容はもちろんですが、ホームページがかっこいいか、働きやすそうな雰囲気かといったような領域にまで拡大しています。求職者側の比較検討レベルは確実に上がっている状況において、
「そもそも採用に特化したホームページがない」
「募集要項だけで比較検討できる内容が薄い」
「ホームページの最終更新が古い」
「文字だけで雰囲気が伝わらない」
このような対応は、合同説明会に参加していながら、ブースで採用以外の話をしている、自社の説明が不十分、会社紹介資料が古い、プレゼン資料がない…そんな採用説明ブースと同じです。これでは逆に悪印象を与えかねません。
求職者へ適切に自社のアピールを行うためにも、「採用に特化したホームページ」を整備することは、採用活動において絶対に必要な基礎になります。ホームページには、日々改善を行っていく適切な「運用」が必要になります。
こうした「掲載」から「運用」への変化は、言い換えれば求人媒体に掲載すれば事足りる「他社依存一辺倒採用」から、ホームページなどで自分たちも責任を持って情報を発信する「自分たちの採用は自分たちで責任を持つ」という常識の変化に他なりません。
一方で、求人媒体を全く使わなくて良いということでなく、むしろ求人媒体をフルに活用したうえで、自社も自ら情報発信を行うことが必要になってきたという認識を持つことが大切です。
2. 物流企業の効果的な採用特化型ホームページの作り方
冒頭で、人材争奪戦の時代を生き抜くポイントは、「差別化」と「正しい情報伝達」だとお伝えしました。もう少し深堀をすると、
「差別化」=ページ掲載内容での差別化
「正しい情報伝達」=媒体の有効利用
とルール化できます。以下ではこの2点を押さえるためのステップを紹介していきます。
差別化
見込み顧客を集めて、自社をアピールして好きになってもらうことをマーケティング活動とするならば、求職者を集めて、ホームページ上で自社の魅力を伝えるという採用活動は、マーケティング活動とほぼ同義であるといえます。
マーケティング活動で大事な基本は、「相手の気持ちになって考えること」です。自社のアピールポイントを探す前に、求職者の目線に立って、
「自分ならどう思うか?」
「自分ならどうするか?」
と考えることからつくり始めましょう。
「就職・転職」という選択は、人生に大きな影響を及ぼすことから、求職者は、皆「失敗したくない」と思っていて、基本的なスタンスとしては、「ここの会社で働いて大丈夫だろうか?」という一抹の不安を抱えながらホームページにやってきます。
物流業界を選択する求職者が抱えている不安は、募集職種によって多少変わりますが、例えばトラックドライバーの場合、
・事故が多くて危険なのではないか
・長時間労働で残業ばかりなのではないか
・大型の免許を持っていないが働けるだろうか
というような“誤解”を持っています。この”誤解”のおかげで、自社の働きがいや安全に対する取り組みを正しくアピールできれば、逆にたくさんの求職者が集まります。
どのような “ 誤解”や不安があったのかを知るためには、入社年度の若い社員や、内定者などに当時の不安要素や知りたかったことをヒアリングしてみると良いでしょう。
求職者の “ 不安”や “ 誤解”が特定できたら、それを払拭する内容をホームページに記載します。掲載内容は、差別化のために「求職者にとってのメリット」かつ「自社ならではのアピールポイント」になるように配慮しましょう。
細かい掲載内容についてのチェックリストは、「採用コンサルタントが使っている「良い物流企業ホームページ」のチェックリスト」(ダウンロード資料)にまとめられておりますので、ぜひそちらをご活用下さい。
細かい内容の説明はダウンロード資料に譲りますが、最も差別化に寄与するのは、「実際に働く社員の声」です。「自分が3年~5年後働いているイメージを持てるか持てないか?」は求職者にとって大変重要です。また離職する人の多くの本音が「人間関係」であるところを見ると、そこで働く人たちの情報は社員の協力を頂きながらきちんと作りこむべきです。実際に採用特化型ホームページを上手に活用している会社はこの部分に特に力を入れています。
正しい情報伝達
ただページを作っただけでは、倉庫に眠っている商品と同じですので、ホームページの発信内容が決まったら、次は求職者に届くための、情報の伝達準備が必要です。この視点が欠けていると、リソースを投じて整備したホームページが無駄になってしまいます。
といっても、ホームページの情報伝達手段は様々で、当然求人媒体に応じて特長が異なります。今回は媒体の中で最も通行量の多い(求職者がたくさん利用している)「indeed」「Googleしごと検索」に絞って紹介します。
今回はindeedとはなにか?Googleしごと検索とはなにか?という記事ではないので、詳細の説明は省きますが、採用ホームページの内容をindeedやGoogleの機械が読み込んで(クローリングといいます)、それを自動で反映し、まとめて求職者に届けるというものです。
その際機械側が読み込む部分は、募集要項の表部分になります。
※勤務地や、募集条件が書かれた表です。
ポイントは、機械がきちんと読み込めるよう、ガイドラインに従って募集要項を書くという点です。
ガイドラインによると、”採用ページの掲載には、Indeedによるクローリング(読み込み)の設定が必要となります。この設定のためには、原則として以下のような条件があります。
・自社HPに採用ページが設置されている(他社運営サイトに掲載の求人情報はクローリングできません)
・求人情報が画像ではなくテキストで記載されている
・職種名がシンプルで明確に記載されている(キャッチや見出し、文章はNG)
・勤務地が市区町村レベル以下まで詳細に明記されている
・業務内容がひとつひとつ詳細まで明記されている
・応募方法が明記されている (応募フォームの場合は、他ドメインに遷移せず、同じドメイン下で応募完了まで行うことができる)
・1職種×1勤務地ごとに固有のURLが設置されている”
とあります。最も漏れが多いのが、最後の1募集要項ごとに1つのURLを発行する必要があるということです。ここに設計漏れがあると、作り直しとなり大変面倒ですので、まず初めに押さえておきたいところです。
文字通り、Google上で「〇〇 求人」などと検索すると、上記のように募集要項が簡易的に表示される仕組みです。こちらもindeed同様、勤務地と職種によって表示が異なってきます。
ガイドラインによると、原則indeedに記載すべき内容と大きく異なる部分がありませんが、Googleの機械側に詳細情報を教えてあげる、「構造化データのマークアップ」という作業が必要になります。
(手動or自動)
その際必要になる項目は、
・日付(雇用主が求人情報を投稿した最初の日付)
・求人の詳細な説明(職務、資格、スキル、業務時間、学歴に関する要件、経験に関する要件)
・職位を提供している組織(会社名)
・勤務地(オフィスや作業現場など、従業員の職場となる特定の場所)
・職務の名称(「!」や「*」などの特殊文字を多用しない)
・有効期限(求人情報に有効期限がある場合に必須)
・推奨項目(リモートワーク可能エリア、基本給、雇用形態、識別子、アイコン)
になります。こちらは実際にどのように表示されるのか、テストが可能です。
作業が重複しないよう、indeedでもGoogleでも対応できるように募集要項ページは設計を行うことが肝要です。
以上が採用特化型ホームページの作り方の基本的な考え方になります。繰り返しになりますが、人材争奪戦の昨今では、「差別化」と「正しい情報伝達」のために、採用特化型ホームページを作りこむことが必須の条件です。
実際に作りこみを行い、運用していくともなると、より緻密な技術が必要になってきますので、外部の専門家やコンサルティング会社に相談してみるのがより確実でしょう。
当社は物流業界に長けた採用コンサルタントが多数在籍していますので、お困りの際はぜひご相談いただければと思います。