荷主主体で進めるCO2排出量の可視化ステップ

井上真希

Pen Iconこの記事の執筆者

井上 真希

船井総研ロジ株式会社 ロジスティクスコンサルティング部
チームリーダー チーフコンサルタント

製造業・小売業・ECを中心とした荷主企業に対して、物流倉庫の改善提案・在庫の適正化・管理の提案を行っている。また、物流子会社の評価や在庫管理・分析を得意とし、分析を軸にした物流改善にも従事。近年は、サステナビリティ・ESG領域における専門的な物流コンサルティングにも取り組んでいる。​

≫ 荷主企業(製造・卸・小売業)向けコンサルティングについて、くわしく知りたい方はコチラ

昨今、荷主企業(製造業、卸売業、小売業等)から「物流面のCO2排出量の管理方法について各社ではどのような取り組みがなされているのか」「環境改善へ向けた取り組みを進めたいが何から着手すべきかわからない」などの物流分野における環境対策に関する相談が増えています。企業の環境への取り組みが社会的な評価を受ける時代である一方で、取り組みステップがわからないという声をよく聞きます。

「国土交通省環境行動計画」では、運輸部門において、CO2排出量の削減に関して、従来の28%削減から35%削減に目標が引き上げられました。新たに設定された2030年度削減目標の達成に向け、より一層、環境対策の推進・強化が求められています。物流領域における脱炭素化への課題は多岐に渡りますが、まずは自社における環境負荷の「実態把握」が取り組みの第一歩となります。

本稿では荷主企業が主体となって進めるCO2排出量の算定手法及び可視化に向けて抑えておくべきポイントについてご紹介します。

物流面における環境問題への対策は荷主の義務なのか?

荷主企業はロット数や納品頻度、納品指定時間などの制約を設ける立場であり、物流プロセスの中で重要な役割と責任を担っています。従来の物流サービスの見直しや車両の積載率を上げるなどの効率的な物流構築の施策によりCO2排出量削減に寄与できる可能性があります。

また省エネ法の改正により年間輸送量3,000万トンキロ以上の特定荷主企業においては取り組み計画と定期報告が義務付けられています。

≫【関連資料】「ロジスティクスにおけるESG実行の手引き」をダウンロードする(無料)

CO2排出量の可視化に向けた4ステップ

1.目的及び調査範囲を明確にする

CO2排出量を把握する上でやるべきことは、CO2排出量の可視化の目的及び調査範囲を明確にすることです。CO2排出量の実態は同じでも算出方法が異なる場合、CO2排出量の数値は異なる結果となります。

そのため、年度ごとに算出方法が異なれば、適正な経年比較・評価することができなくなります。目的及び調査範囲により求められるデータの精度や収集方法、計測方法が変わる為、算出前の施策としては一貫した目的と調査範囲を設定することがファーストステップとなります。(図表①:ロジスティクス分野におけるCO2排出量算定方法経済産業省より引用)

荷主主体で進めるCO2排出量の可視化ステップ
図表1 船井総研ロジ作成

2.必要データ収集

CO2排出量の算出において、可能な限り精度が高い方法が望ましいですが、当然、その分の作業負荷が大きくなります。精度も重要ですが、目的に応じたデータの把握と容易性との関係も視野に入れておく必要があります。必要データには自社で把握可能なデータと委託企業の協力が必要なデータがあります。算出方法ごとに必要なデータ及び把握方法は下図の通りです(図表②③)。

荷主主体で進めるCO2排出量の可視化ステップ
図表2 船井総研ロジ作成
荷主主体で進めるCO2排出量の可視化ステップ
図表3 船井総研ロジ作成

3.CO2排出量の算出

CO2排出量を可視化する目的によって異なりますが、算定は段階的に取り組むことをお勧めします。算定式の概要及び必要データは図表①の通りです。前述した通り、何を達成するためにCO2排出量の可視化に取り組むのか、またその目的達成に必要なデータ精度などを明確にする必要があります。荷主企業の場合は、実績に基づいて把握できるデータは限られている為、委託企業へデータの提供依頼をかけるか或いは推定値で算出する必要があります。

一概には言えませんが、荷主主体でCO2排出量の可視化を進める場合は、作業負荷も考慮するとトンキロ法の「改良トンキロ法」を使用したCO2排出量の把握から段階的に進めていくことをお勧めします。

4.環境管理の枠組み整備

CO2排出量の可視化及び環境負荷を適正に管理・評価していくためには、継続的に取り組みを推進していく仕組みが必要です。削減目標・削減取り組みの方向性・環境管理体制等を整備する必要があります。自発的な環境改善サイクル(PDCA)の構築により更なる持続的な物流体制の実現に近づけることができます。環境改善サイクル(PDCA)の一例は下記の通りです。

  • 【PLAN】削減取組の方向性確定
  • 【DO】削減取組を実践
  • 【CHECK】実績管理・評価
  • 【ACTION】分析結果に対する改善策の提示

≫【関連資料】「ロジスティクスにおけるESG実行の手引き」をダウンロードする(無料)

最後に

昨今、サステナブルな物流の実現に向けて荷主企業が主体となり、取り組みが推進されています。安定的且つ持続的な物流構築を進める動きが広がりつつありますが、まずは自社の環境負荷への実態把握から始めてみませんか?

井上真希

Pen Iconこの記事の執筆者

井上 真希

船井総研ロジ株式会社 ロジスティクスコンサルティング部
チームリーダー チーフコンサルタント

製造業・小売業・ECを中心とした荷主企業に対して、物流倉庫の改善提案・在庫の適正化・管理の提案を行っている。また、物流子会社の評価や在庫管理・分析を得意とし、分析を軸にした物流改善にも従事。近年は、サステナビリティ・ESG領域における専門的な物流コンサルティングにも取り組んでいる。​

≫ 荷主企業(製造・卸・小売業)向けコンサルティングについて、くわしく知りたい方はコチラ

その他の記事を読むArrow Icon

人気の記事

ページの先頭へ