ESG目標を達成するためのロジスティクスDX

船井総研ロジ

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ESGの成果を促すデジタル化とDXの活用

近年では、「DX」(デジタルトランスフォーメーション)と「ESG」(環境、社会、ガバナンス)は、企業にとって主要なテーマとなっています。実は、デジタル化はESG関連の目標を達成するための優れた手段でもあり、ESGへ取り組む企業がDXを活用すればESGの成果も出しやすくなります。

環境の観点

ESGの取り組みは環境の観点からすると、温室効果ガスの排出と廃棄物を削減することが不可欠です。しかし、企業が成長し拡大するにつれて、その排出量も増加します。企業の成長とともに、温室効果ガス削減に向けて、新しい取り組みを始める必要があります。

ロジスティクスの観点

ロジスティクスの観点からすると、ロジスティクスを最適化し、エネルギーや燃料の使用を抑制し、ロジスティクス業務によって排出される廃棄物の量を削減する必要があります。

ガバナンスの観点

ガバナンスの観点からすると、企業がESGレポートで温室効果ガスの排出量を報告するために、ロジスティクス活動から生じる温室効果ガスの排出量を測定するシステムがあります。このようなシステムやソフトウェアなどの開発が世界中で増えており、温室効果ガスの排出を大幅に削減するためのシクミが構築されてきています。

社会的な観点

社会的な観点からすると、ロジスティクスセンターで働く従業員の負担を軽減し、労働環境や安全性を向上させることが重要です。そのようなニーズのために、倉庫の自動化、デジタル化を推進する技術も広く増加しています。

ロジスティクスのDXソリューションは、ESGの目標達成に貢献するだけでなく、他の利点も多くあります。ロジスティクスセンターの業務プロセスをDXで改善することにより、従業員の労働時間を削減し、職場環境を改善することができ、更にはエネルギー、燃料、梱包材を削減することでコスト削減にも繋がります。

ESGの成果を高めるデジタルソリューションの3つの例

次に、ロジスティクスにおけるESGの成果を高めるデジタルソリューションは何があるのか、どのようにESGに貢献しているのかを次の3つの例でご紹介します。

ロジスティクスセンターを最適化するためのWMS

ロジスティクスセンターの最適化は、効率を改善し、環境にプラスの影響を与えるために行うべき重要なステップの1つです。
WMSの機能は、通常人間が行うタスクを効率的に実行するためのアルゴリズムを持ち、業務の運用コストと時間の削減をもたらすだけでなく、作業を最適化することにより、CO2排出量を削減することができます。
例えば、WMSにてピックルートの最適化機能を使用することにより、ピッキングされるすべてのアイテムに対して倉庫内の最適化されたルートを作成し、個々のピックラウンドごとに最短のピックルートを決定します。これは生産性向上に貢献します。
WMSは、作業員とWMSアプリケーション間のオンラインおよびリアルタイムのデータ交換を可能します。これにより紙の無駄を最小限に抑えることで環境リソースを節約できるため、ペーパーレス化にもつながります。

現代的なピッキングスタイル

物流現場では、紙を使用してピッキングを行うことが多いですが、紙の紛失や、紙を出力する時間がかかるといった問題があります。そのような問題を解決するためには、音声を使った「ボイスピッキング」やスマートグラスを使った「ビジョンピッキング」などでペーパーレス化により、業務効率化を実現することができます。
ボイスピッキングを使用することで、作業者がヘッドセットから口頭で指示を受けるため、紙のピッキングリストは不要になります。作業員はリストを参照して倉庫内を移動するのではなく、ソフトウェアが作成した最適なルートで移動しながら、必要な商品をピックする事が可能です。
これにより、業務プロセスから紙が完全に排除されるほか、ピッキングプロセスをより迅速かつ正確に移動できるようになり、新人作業員や派遣の方、外国籍の作業員が作業内容を容易に習得することができます。

CO2排出量の削減に貢献する自動倉庫

自動倉庫は、製品はほぼ天井近くまで積み重ねることができるため、手動システムよりも必要面積が小さく、広い施設の利用によるCO2排出の削減に繋がるという、環境面での大きな利点があります。さらには、膨大なエネルギーを消費する冷蔵・冷凍施設で特に効果的です。

自動倉庫は導入コストがかかり、企業にとって自動化を進める際の高い壁にみえますが、CO2排出量削減の他に、生産性の向上や業務品質の向上など、さまざまなメリットがあります。
例えば、生産性を測る実験によると、自動倉庫は顧客の注文から配達までの業務を3時間で行われたが、同じ仕事量を人間が手作業で行うと、完了まで平均的に12時間かかるといった調査結果が報告されています。(参考資料:持続可能性をサポートする運用のためのWMS統合によるデジタル化と自動化による倉庫活動の脱炭素化、ダリア・ミナシュキナ、アリ・ハッポネン、フィンランド2020年)
技術が進歩するにつれて、ロボットが使用されていないときに電力を節約するため「スリープ状態」になる機能など、さらなる省電力機能が自動倉庫に組み込まれています。

人手不足が進む中、倉庫業では自動倉庫で省人化を達成することが理想的です。必要な商品を自動的に作業員まで届けば、作業員の負担を減らすこともでき、残業時間削減のような社会的な課題の解決にも繋がります。
さらに、CO2排出量の対象範囲は、物流現場の労働者自身が排出するものも含まれます。例えば、労働者の毎日の通勤(電車、バス、自動車などの利用によるもの)、労働者専用の施設(倉庫の暖房、カフェテリア、設備など)の建設および運営などがあげられます。省人化ができれば、これらによるCO2排出量も削減できます。
海外では、多くのスタートアップ企業がESGとサステナビリティを推進するDXソリューションの開発を競っています。しかし、技術が増えても、実際にロジスティクスセンターでは、ピッキングや在庫管理などの業務にアナログ手法を使用している企業が多く残っており、DXの導入が遅れているのが現状です。多くの障壁が依然としてロジスティクスにおける新しいデジタルツールの導入を妨げています。

突然、完全に自動化された倉庫に切り替えるのは難しいかもしれません。しかしながら、DXソリューションを基盤とした自動化やESGに配慮したロジスティクスを構築した企業が勝ち残ることは必然となることでしょう。

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