GX推進法が物流業界に与える影響とは?
近年、脱炭素社会の実現が世界的な共通課題として認識されています。日本も「2050年カーボンニュートラル」を目指す国際公約を掲げています。
そんな中、2023年5月12日に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(通称GX推進法)」が国会で成立しました。これは、今までの化石燃料中心の産業・社会構造から、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心に転換する「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」推進のための法案です。
今回は、同法案についての内容と、物流業界への影響と対策について考察していきます。
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目次
GX推進案とは?
まず、GX推進法とはどのような内容なのでしょうか。この法案で特にポイントとなるのは、「GX経済移行債」と「成長志向型カーボンプライシングの導入」であり、それぞれの内容は以下の通りとなっています。
【GX推進法の概要】
なお化石燃料賦課金は2028年度から、排出量取引制度は2033年度から本格的な運用が開始される見通しとなっています。(注2)この法案の成立により、企業活動におけるGXの推進、ひいてはESG経営の推進に取り組む環境がますます整備されることになります。
GX推進法が物流業界に与える影響とは
では、GX推進法は、今後物流業界にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。考えられるのは、以下2点です。
1.脱炭素に向けた取り組みの活性化
まず1つ目の影響は、脱炭素に向けた取り組みの活性化です。従来、物流業界における脱炭素の取り組みは、企業が製造部門等から直接排出するCO2であるスコープ1・2と比較して低い優先順位に置かれがちでした。
その理由としては、CO2排出量全体から見ると、運輸部門が占める割合が産業部門等と比較して低いこと、また多くの場合、荷主企業において物流部門のCO2排出は物流企業に委託しており、自社だけではCO2削減が難しく、責任範囲も曖昧であることなどが背景にありました。
しかしながら、GX推進法に含まれるGX経済移行債の発行は、これまで様々な事業における優先順位付けのなかで脱炭素の取り組みを見送っていた荷主企業や物流企業にとっては、GXにかかわる設備投資をするまたとない機会となります。これを機に、物流業界でもGXに取り組む企業はますます増えてくるでしょう。
2.物流コスト上昇
2つ目は、物流コスト上昇の可能性です。GX推進法に含まれる「成長志向型カーボンプライシング」の導入により、今後化石燃料の輸入事業者に対し、CO2排出量に応じて賦課金 (※3)が課せられることになります。
トラックなどの輸送機関は多くの場合、化石燃料を動力源としているため、化石燃料の輸入事業者に課せられる賦課金の上昇が燃料価格に影響する可能性があります。そうすると、燃料価格の上昇は最終的に荷主企業の配送コストに転嫁され、荷主企業の物流コスト上昇の要因となる可能性があります。
この化石燃料賦課金は2028年度から導入される予定ですが、今後荷主企業の物流部が注視しておくべき動向の1つであるといえます。
GX推進法の成立により、今後日本においても企業活動における脱炭素の取り組みが本格化していくと予想されます。荷主企業の物流部においては、時流に乗り遅れないよう日々動向を注視するとともに、日本全体のサステナブルな物流体制の構築に向けて、自社にESG経営におけるリスクがないか確認していくことが必要です。
【参考】
※1:環境省「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(GX推進法)の概要」
https://www.env.go.jp/content/000110823.pdf
※2:内閣府「国際水準のカーボンプライシング導入についての提言」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20231225/231225energy05.pdf
※3:賦課金:環境保護や公共事業の費用などを賄うために企業や個人に課せられる料金のこと
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