第7回 進化し続ける物流の構築 主体的な改善提案を

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

 物流業のライフサイクルは、昭和四十~五十年代に第一次成長期を迎え、平成二年の貨物自動車運送事業法施行後から第二成長期となりいまに至る。
 貨物運送事業者数は、二十三年の六万三千社をピークに今後加速度的に低減すると推測される。ライフサイクルの局面は、成熟期から衰退期への端境期に直面している。
 今後の物流業は、マーケット(荷主)の要望と自社のポジションを的確につかんだ上で経営努力を行わなければ、マーケット縮小とともに滅んでしまう。内部環境を見ても、ドライバー不足や車両コストの上昇など、予断を許す状況ではない。厳しい局面の中で、荷主は物流企業に何を求めているのだろうか。
 コスト削減は至極当然。だが、物流サイドも大きな改善可能な余白や、過剰な利益を享受しているとは思えない。荷主からわれわれコンサルタントへの相談内容で最も多いのは「既存の物流会社から有益な提案が何もない」ことだ。
 一方、これは筆者からすると「無茶振りですよ」と言わざるを得ない。なぜなら、荷主企業と物流企業の取引関係は“利益相反”だからだ。
 荷主は物流コストを下げることが目的であり、物流企業は売り上げ・利益を上げることが目的。そのため、取引関係では、両者間で一度合意が図られても、時間の経過とともに互いの思惑や方針のズレが生じるようになる。
商品販売のように、新商品は価格を高く設定し、旧品になると価格を下げて販売するということは物流サービスではできない。そもそも、輸送や保管に流行・トレンドはない。
例えば、新車導入時は運賃が高くその後は運賃を下げていくといったことはなく、つまり価値と時間の関係が商品・サービス対価と連動しないマーケットなのだ。このことは、輸送コストに占める割合が車両価格・人件費・燃料費などさまざまな要因により形成されるために、一つのコスト要因の時間価値のみではサービス対価を決定できないためでもある。輸送サービスと同様な旅客・ホテル産業などでは、シーズン価格や曜日・イベントなど、多くの価格変動要素を取り入れたフレキシブルな価格設定が定着している。
荷主が最も求めるのは、時間と共に進化し続ける物流体制の構築。契約期間内であっても、物流事業者が主体的に無駄の排除や工程の見直しを実施し、契約料金の改定を具現化することだ。日本型3PL(サードバーティー・ロジスティクス)はいま、革新的な進化を求められている。

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

その他の記事を読むArrow Icon

ページの先頭へ