第13回 物流子会社の3PL (3)開発営業の困難さ

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

 自社が最大限の力を発揮できるサービスメニューを作成し、どこの市場で誰と戦うべきかを決めた後は営業担当者の育成が必要だ。物流事業者が手掛ける新規獲得は、開発営業の成果。物流子会社が展開する開発営業には三つの方策がある。
 一つ目は、親会社の取引先サプライヤー(仕入れ先)への調達物流提案。
 営業開発としての難易度は低いが、案外、受注できない。親会社の資材部員、営業部員の同行や紹介は、一般の物流事業者には真似できない優位性だが、営業を仕掛けるサプライヤーが親会社よりも大手企業の場合、かなりの割合で話が進まない。
 理由は、①コストが合わないこと②サプライヤーの輸送システムに何かしらの影響を及ぼすから――の二つだ。親会社からすると調達物流、サプライヤーからすると製品物流となる。どの企業も、製品物流に関しては最大限のコスト管理を行っている。もしそのサプライヤーが混載チャーターだったりルート便だったりすると、一つの納品先を失うことで積載率や積荷運賃の最適化が崩れてしまう。あまり影響がない場合を除いて、サプライヤーはいい顔をしない。
 そもそも、日本ではサプライヤーが納品先まで物流を負担する商物一体型が一般的で調達物流が進まない原因だ。

担当者を精神面でフォロー

 営業担当者としては、アポイントは取れるし話も聞いてくれる。営業活動としての手応えは悪くない。だが、明確な回答を避け、のらりくらりの状態が続く。ここで普通の営業マンは壁を感じる。忙しく動き回っているわりに成果が出ない。受注ができないと開発営業としては何とも居心地が悪い。当然、周りの目も厳しくなる。一般の物流会社は営業会社であるため、このような事態は言わば日常茶飯事。企業文化として、営業慣れしていない物流子会社の開発営業マンには、テクニカルな営業術よりも、メンタル面の強化やサポートが必要となる。
 売るもの(物流サービス)と営業ツールと営業先名簿があれば、営業活動には取り組めるが、日常活動へのフォローやメンタル面のサポート体制が伴わないと新たに配置した営業部隊は成果を残すことが困難になる。
 親会社で営業担当を長年やっていた物流子会社のトップが、外販戦略を標榜する上で、この落とし穴に陥る場面を幾つも見てきた。企業文化にない活動を進めるには、主体となる従業員のメンタルヘルス対策もしっかりと計画しておきたい。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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