第10回 マーケティング思考 営業戦略と真の3PL
物流会社にとって、マーケティングは複雑さを極める。対象となる顧客(荷主企業)は複数の切り口によって分類される。製造業・卸売業・小売業・その他―といった業態分類と、化学・電気・医薬・食品・日雑・衣類―などの業種分類がある。さらに常温・冷蔵冷凍などの温度管理、BtoB・BtoCといった形態分類もあり得る。重要なのは、それぞれの市場規模を正確につかみ、競合相手や価格水準も把握しておくことだ。
マーケティング思考は、「顧客」を主体に行わなければならない。自社が売りたいサービスを全面展開しても、顧客が欲しいサービスでなければ成長は見込めない。ターゲットとする市場が特定の地域・サービスであっても、トップシェア・業界ナンバーワンを目指せない事業は、いずれ利益を生む事業でなくなる可能性が高い。
自社の物流サービスを顧客が利用することで、顧客の利益と自社の利益が一致する仕組みこそが、在るべき姿だ。双方が利益を創出する方向性が一致して初めて戦略パートナーといえる。
本来の3PL(サードパーティー・ロジスティクス)はこのモデルを目指すべきだ。日本型3PLはまだ成長段階で、顧客の利益を追求しきれていない。今後は、顧客にとって有益な存在となる戦略パートナーへの進化が求められる。差別化戦略は、たった二つのことを考えることから始まる。①顧客ができないことをやる②顧客に代わって行う―。全ての物流サービスはどちらかに該当する。
次に考えることは、以下の三点。①顧客の利益を創出することができるのか②競合相手との差別化が図れるのか③競争優位なビジネスモデルとなっているのか―。
物流サービスの基本である業務請負契約は、どうしても利益相反となってしまう。だが、利益相反な関係のままでは顧客の利益を創出することはできない。顧客のできないことや顧客に代わって実行するだけの物流サービスでは、常に競合との奪い合い競争が繰り返される。
物流企業が3PLを戦略の中心とするなら、自社拠点や自社配送ネットワークは数多くある選択肢の一つと位置付けなければならない。3PL開発営業部隊に「新倉庫を埋めろ」「共同配送網の積載率を上げろ」といった指令を出す経営者がいれば、3PLを全く理解していないことになる。倉庫を埋める、積載率向上などは当然のことだが、3PLの概念とは違う。3PL企業の生き残り戦略は、徹底的なマーケティングを行った上で立案すべきで、その手間暇を惜しまないことが最も肝要だ。