第165回 ロジスティクスとインセンティブ(12)ゲインシェアの導入事例5

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

ゲインシェア・オプションの事例

前号の引き続き・・・「ゲインシェアの設定」

荷主企業と物流企業の関係は、基本的には利害が衝突します。
荷主企業は運賃や保管料などの物流コストを、少しでも安くしたい作用が働き、物流企業は提供するサービス対価を高くしたい願望があります。
この両社間は「コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反関係)」であり、通常の取引関係では、対等な立場でのパートナーシップとは到底言えない関係となります。
しかし、物流最適化を図るうえで荷主企業と物流企業が対立したままでは実現が乏しく、好ましい関係ではありません。

では両社間の関係は、何故利害が衝突してしまうのかを考えてみます。
サービスを提供する物流事業者には、提供するサービスの基となる「原価」が発生します。運送サービスであれば、車輌費や燃料費・人件費などになります。
保管であれば、土地・建物に関する償却費や維持費と固定資産税などです。

物流事業者は運送原価や保管原価に加えて、「一般管理費」と「利益」を加算した後にサービス対価として荷主企業へ請求します。
わかり易く式にすると、以下のようになります。

「(1)サービス原価+(2)一般管理費+(3)物流事業者の利益=(4)物流サービス費」

上記(2)と(3)は、契約をした物流企業の絶対値であり、荷主企業が実行する
物流改善とは、全く相関しない費用となります。この部分が、利害の衝突となる一番の理由でもあります。

(1)についても、一般的には原価が開示されることはなく、荷主企業から見るとブラックボックス化されたコストではないでしょうか。
このブラックボックス化されたコスト構成では、改善の効果測定が曖昧になり(1)の改善(効果)を(2)と(3)が包括してしまう恐れがあり、明確な結果が表れ難いことが想定されます。

物流事業者が提供する「物流サービス費」は、ある程度の市場価格が形成されており、初回購入時には適正化された価格で購入することは可能です。
初回購入の価格から、最適化を図り改善を実行することによって得られた利益を、荷主企業と物流企業の双方が享受するシクミが「オープンブック方式」を取り入れた、「バリュー型3PL」となります。
バリューの享受を具現化する方法が、「ゲインシェア思考」の導入です。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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