第169回 物流アウトソーシングの落とし穴(2)~不完全な情報開示が将来のリスクとなる~
■物流アウトソーシングに必要な情報とは
物流アウトソーシングを成功させるには、荷主企業と物流事業者が均等な情報を保有することが肝要です。
荷主企業より分業された物流オペレーションが不均等な情報構造では、安定的に高品質な運用を続けることが困難となります。
物流アウトソーシングに必要な情報とは、以下2通りに分類されます。
何れも荷主企業と物流企業の双方が保有する情報を正確に迅速に開示することが求められます。
(1)業務運用情報
荷主企業側が保有する物流戦略や販売商品に関する情報。
物流企業が安定したオペレーションを実行するには、製造や販売に関わる各種の情報を必要とする。
業務運用情報を細分化すると、①リアル情報②ヒストリー情報③フォーキャスト情報の3つに分けることができる。
(2)業務品質情報
物流企業側が保有する各種の情報。提供する物流サービスの業務レベルに関わる情報であり、㈰取引開始前に存在する情報㈪取引開始後に存在する情報の2つに 分けることができる。
物流企業が保有する「㈰取引前に存在する情報」には、業務経験や実績などのオペレーションレベルを予想する重要な情報が存在します。
荷主企業は開示された情報を基に、アウトソーシングの成功度合いを無意識の中で図り選定理由のひとつとしてその情報を信頼します。
■定性情報と定量情報
コンペに参加する物流企業は、自社のオペレーション力を示す情報を適確に荷主企業へ提示しなくてはなりません。
特にサービスレベルに関わる情報は、定性情報だけではなく定量情報を正確に伝達することが荷主企業の信頼を得られます。
定量情報とは、倉庫や配送センターの許容キャパシティーや投入可能な作業スタッフ数、最大出荷数量などが該当します。
「物流SLA(サービス・レベル・アグリーメント)」の項目一覧を事前協議の段階で提示すると、情報の平等化が図れ業務期待値と実績値に大きな差異は発生しないと思われます。
アウトソーシング後にありがちな、「期待はずれ」な結果を避ける手法として有効です。
■情報の非対称性が失敗を招く
物流アウトソーシングが開始された後も業務運営に関わる重要な情報は双方が保有しています。
例えば、荷主企業の新商品情報やリコール情報などは通常物流とは違った業務や物量が発生するため、物流企業と均一の情報共有が求められます。
もし荷主企業と物流企業との間に情報の隔たりがあり、「情報量」や「時間」に格差が生じてしまうと、大きな混乱を招くことが想像されます。
この現象を「情報の非対称性」といい、永くこの状態が続くと、両社間が築いた友好関係に亀裂が発生する原因となります。
情報格差によって両社の友好関係が離反し、結果として契約解除になるパターンは決して少なくない事例です。
次号に続く。