第122回 外販を止める物流子会社の行方 その2
外販停止に至ったコンプライアンスの壁
多くの物流子会社は、利益肥大化策としての外販獲得戦略が時代の趨勢とも言えます。
親会社の物量をベースとし、永年培ってきた業界や商品の特性をノウハウとした共同物流や一括請負は、(親会社)と同業・同種の物流を請負う上で一定のコストダウンや安定供給などの成果が結実しました。
企業経営者は、市場ないしは特定株主(親会社等)の評価を維持し続けるために、企業価値及び企業規模の拡大が不可欠であり、そのための経営戦略上に、外販獲得が掲げられている訳です。
しかしその企業の一定規模を超過した場合に、管理・運営面での綻びが少しずつ顕在化してきます。
コスト増大や品質低下など、管理・運営において明確にその実態が把握できる面と、労働環境の悪化やコンプライアンスの緩みなど、日々のルーチンワークに潜在してしまうリスクも少なくはありません。
特に、コンプライアンスに抵触するような事態は、当該企業だけの問題では終わらず、その親会社もしくはグループ全体への影響も考えられます。
物流子会社の外販実績は、共同配送やセンター一括請負などのように、自社において厳格に管理・運営可能なものと、輸配送元請などのように、直接的にはその全体に管理が行き届かないケースもあります。
再委託先もしくは再々委託先などが実運送を行うケースも多々あります。
その中でも、定期運行や常用化されたシクミに関しては、運行会社や運行状況などのチェックも、体制やシクミの構築によって可能ですが、俗に言うスポットや瞬間的な波動対応においては、現時的には厳格管理は困難なことと諦められているケースが実態だと思われます。
それらの物流業務の実態において、過積載や超過労働、不法就労などの法令違反が起こり得る可能性を親会社の客観的な立場で視座すると、利益とリスクのどちらに重点が必要かと、グループ全体戦略にその判断は委ねられることとなります。
物流業務請負におけるコンプライアンス上のリスクは、その拡大とともに並行して増大している実態が、外販獲得戦略の壁となりつつあるようです。