第275回 変貌する物流戦略21
「市場価格と適正価格」(4)
物流戦略において、今までは「拠点集約」が最も効果的な取り組み手法でした。
しかし、あらゆる業界における人手不足と産業構造の変化が起きている今は、拠点の「集約・統合」よりも『分散』が重要な戦略となります。
労働集約産業と言われる物流オペレーションは、“マンパワー”から“マテハンパワー”へと力の移転が進みつつあります。
物流機器の高度化に対応可能な商材や取引スキームはその流れに乗ることで時流を掴めます。
一方で、付加価値の低い(低粗利)商材を取り扱っているビジネスモデルでは、(1)高濃度(2)高密度(3)高回転を実現できるPDCAを早急に組み立てる必要があります。
荷主企業は今、3年から5年後の動向を見据えて物流戦略を再策定する必要があります。
それでは、前号からの続き輸配送費における市場価格についての考察です。
2.路線便、宅配便などの特別積み合わせ輸送
路線便と宅配便の区別がよくわからないとのご意見を耳にします。
路線便(BtoB)、宅配便(BtoC、CtoC)と定義すればスッキリします。
路線便は皆様ご存知の通り、路線運賃タリフと言うテーブル運賃表が存在します。
基本的に路線便はこのタリフが運賃契約の主体となります。
「昭和60年の基準」「平成2年のC」といった年号+レベルがその呼び名
となっています。
市場価格は、路線事業各社が荷主と契約しているタリフの平均値と見て下さい。
どの水準のタリフが契約されているか、どの契約のタリフが現況の見積で提出されているかがポイントとなります。
2013年以降、契約タリフの水準と新規見積タリフの水準は、これまでに無いレベルの大きな運賃ギャップ(格差)が発生しています。
弊社船井総研ロジのアナリストは、そのギャップ指数は約20-30%程度と見ています。
宅配便に関しても、各社が個別に届出している個建料金表を適用していますが、契約ベースと新規見積ベースは、約15%-30%程度のギャップがあります。
この運賃ギャップ指数は何を意味しているのかと言うと、市場価格の値上り幅を意味しています。
路線運賃の相場とは、契約運賃であっても新規見積運賃であっても、全国に存在する全ての実例を集約すると、その水準は収斂されます。
取引総量によって当然違いが発生し、タリフレベルは3段階に分かれます。
2013年から大きく動きのある路線・宅配運賃相場は、これまでにない幅で加速度的に跳ね上がっています。
自社の契約タリフが相場のどの位置にあるのかを知ることで、将来の値上り対策は可能となります。
これまでのように、拠点集約によって優位な運賃タリフを引き出してきた荷主・3PL企業ほど、今後の拠点分散における将来の値上がりリスクは大きいものと見て下さい。
次号に続く。