第215回 ポスト3PLの時代(13)
前号に続き、Web通信販売企業A氏から相談された「物流コンペ」の模様を紹介します。
コンサルタントB氏は、「一般的な業務委託(請負)契約では、双方の関係は利益相反となってしまいます。
その契約形態で、物流会社が自社の利益を削ってまで、御社へ有利な提案があると思いますか??・・・」
続けて、B氏が言う。
「例えば、20名で実行しているピッキング作業を、物流企業さんが15名でできるように成ったので、5名分の単価を割り戻して値下げしますよ」と言ってくれると思いますか?
物流企業さんの立場からすると、業務改善を実行したのは自社(物流企業)であり、当然その改善によって得られた利潤は自社で享受するのが当然だと、判断します。
荷主が何らかのルール変更や合理化と成りえるプロセス変更を行った場合でも、物流企業さんからは、「これまで実際の収支は合っていませんでした。この改善ができたことによって、ようやく収支トントンになりました。」などと言われ、荷主への還元などは有り得ないといった事例が大半です。
上記の事例は、ある意味当然のことだと思います。
実際に収支がマイナスだったかもしれませんし、収支ゼロかもしれません。
いずれにしても業務委託(請負)契約においては、荷主企業と物流企業の関係は利益相反関係であり、双方が本質的な利益パートナーとは成り得ない関係です。
このことを前提に、今後どのような関係を構築すれば両社のベクトルが合致するのか考えてみましょう。
その疑問について、コンサルタントB氏から以下の解説があった。
「倉庫費用や情報システム費用、さらにマテハン費用などは償却もしくはリース計上となり、月々の費用のなかでは固定費となります。
逆に、作業スタッフの費用は出荷数量に応じて増減する変動費となります。この点をしっかりと理解しておきましょう。
B氏は続けて、「御社のように今後も出荷数量が伸びていく場合、固定費と変動費を一括したうえで、単価設定を行うと、限界費用と平均費用が同等となります。
これはマズイ=御社にとって不都合な契約となります。
なぜなら、固定費用は、ある一定の出荷数量までは同等であります。
物流センターの場合、作業単価が限界費用となりますので、出荷数量が増える毎に増加するコストは設定した作業単価となります。固定費を分離せずに合算のうえで算出した単価(限界費用)は、数量が増加する毎に平均費用が下がることになります。
したがって、下がった費用を利潤として享受できるのは物流企業となる訳です。
またその反面、出荷数量が減少した場合は物流企業の平均費用は上がり、損をすることになります。」
「一見当たり前のことですが、『限界費用』など少し複雑なようですね、ここが物流コストを考えるうえで基礎的な理論となりますので次回のミーティング時に『限界費用』と『平均費用』についてご説明できるように資料を作成しておきます。」
次回、コンサルタントB氏による物流コストの基礎理論について解説していただくことになった。
次号に続く…。