第255回 変貌する物流戦略その1~日本型3PLの終焉、利益相反関係は、真のパートナーとは成り得ない~
■社会問題となっているドライバー不足
一昨年から始まった国内トラック運賃の値上げは、留まる所を知らないレベルに達しています。その理由として大きく二つの要因があげられます。
まず第一の要因は、今や社会問題化しているトラックドライバーの雇用確保問題です。
典型的な労働集約産業である物流業界は、トラックドライバーの労働力に支えられていると言っても過言ではありません。
トラックドライバーの就業者数は123万人(2008年)。全産業の約2%を占めています。
内需産業として、トラック輸送業は雇用総数の観点から見ても、基幹産業でもあり、戦後の高度成長期を担ってきた労働市場でもあります。
その労働市場の需給バランスが、今や完全に狂い始めてきた模様です。
最近では「新3K」(きけん・きつい・帰れない)と言う呼び名もあり、若者層の雇用対象から徐々に遠のく環境となってしまいました。
職業の多様化に伴い、新産業と比較して魅力ある職場では無くなってしまった事も事実として受け止める必要があります。
賃金上昇やドライバー不足とそれに伴う人材確保コストは、必然的に増加することになります。
■競争激化による中小零細運送事業者の苦悩
第二の要因は、その社会問題を引き起こした原因ともなる、運送事業者の収益力低下による経営悪化問題です。
バブル崩壊後の業者間における競争激化と、1990年代から浸透してきた「日本型3PL」の急速な発展による影響です。
筆者が「日本型3PL」と書き述べる理由は、本来の欧米から由来した3PLの定義と異なるスキームで、日本の社会・産業構造を組み入れた形で進化したものだからです。
その日本型3PLが発展・拡大する過程で、約6万社と言われる中小運送事業者の経営実態が変化を余儀なくされることとなりました。
日本の運送事業者は、元々直取引であった自社の荷主を大手物流会社が展開する3PL事業者へ取られてしまう事となったのです。
当然、事業継続を行ううえでは、3PL事業者の配下(下請)として、廉価な運賃で続けるしか生き残りの道はありません。
また、元請運送会社の配下であった、中小零細運送事業者は、二次三次下請けとして企業経営を継続することになります。
熾烈な3PL事業者や大手運送会社などの元請け競争により、運賃は下がる一方となります。
コンプライアンス重視の社会現象により、拘束時間制限や運転時間制限が厳格に求められるように成りました。
更に、中東情勢の悪化により、原油価格も高騰し続けています。
「もうこのままでは耐えられない!」と悲鳴を上げたのが、日本の基幹輸送を支える中小零細運送事業者です。
・・・次回に続く。