第264回 変貌する物流戦略その10
「荷主企業の取るべき施策」(4)
荷主企業における物流オペレーション部門に求められる知識とスキルは、
以下7項目です。
1. 現場遂行力(オペレーション力)
2.スタッフマネジメント力(募集、採用、教育など)
3.倉庫ロケーション設計力
4.倉庫情報システム(WMS)理解力
5.輸配送マネジメント力
6.改善力
7.生産性分析力
今号は、4.倉庫情報システム(WMS)理解力について考察致します。
倉庫情報システムとは、WMS=Warehouse Management Systemの略語で、一般的には倉庫管理システムと訳されます。
倉庫内作業においては、WMSは欠かせない機能であり、WMSの優劣が様々な物流オペレーションの合理性・生産性を決定付けます。
現在のロジスティクスにおいては倉庫管理のみにとどまらず、企業経営に大きインパクトを与える機能と位置づけられています。
荷主企業において、WMSの自社保有/他社利用の選択は重要な物流戦略と言っても過言ではありません。
WMSを自社開発で構築するのか、3PL及び物流企業の保有システムを利用するのか、どちらが正しいと言う訳ではありません。
自社の実態・特性・コストパフォーマンスなどを十分に議論したうえで、情報システム部門と連携を図りながら、その方針を導いていく必要があります。
では、WMSの自社保有と他社利用のメリット・デメリットを考察してみます。
(1)WMS自社保有(開発)におけるメリット
・自社の特性や実態を十分に反映することが可能である
・開発における要件定義が内製化できる
・設計から開発におけるノウハウが社内に蓄積される
・基幹システムとの連携が十分に考慮される
・カスタマイズの自由度が高い
・中間マージンが発生しない分、ローコスト化が可能である
・複雑な業務への対応が可能である
(2)WMS自社保有(開発)におけるデメリット
・自社の特性に深く拘ることで、開発の難易度が高まる
・内部視点が中心となり、本質的な課題を見失う可能性がある
・販売部門の影響が強く、複雑な機能を求められる可能性がある
・業務標準化が図れなく、開発コストが膨らむ可能性がある
・基幹システムとの連動により、カスタマイズの自由度が低下する懸念がある
・カスタマイズ速度が社内情報システムの順番・優先度に影響を受ける
自社開発における要点は、それぞれメリットとデメリットが表裏一体となっていることがうかがえます。
WMSは単に物流オペレーションにおける現場運用システムではなく、サプライチェーン全体との連携や物流の可視化を担う、極めて重要な機能であることを理解しておかなくてはなりません。
物流機能が持続的に成長するためには、競争優位となり得る物流体制の構築と継続的な進化が求められます。
その一翼を担っているのがWMSと筆者は考えます。
次回は3PL/物流企業が保有するWMSのメリット・デメリットについて考察してみます。
・・・次回に続く。