大阪で起きた地震からみる運送会社のBCP
6月18日(月)の朝、大阪北部を中心に発生した地震では、人と物流を直撃しました。
通勤通学ラッシュの時間帯とも重なり、各鉄道も安全確認のため、運転見合わせを行いダイヤは大きく乱れ、車内待機する人々や停車した車両から降り自力で駅まで向かう人々など、大阪の交通網が半日以上麻痺したのは記憶に新しいことと思います。
当日は、バスやタクシーなどの代替えの交通も見つからず出社困難者が発生し、大阪府民へ大きな衝撃を与えました。
物流の影響としては、地震発生後、関西の高速道路は全線通行止めとなりました。
午後には通行止めが解除されたものの、大阪全域の交通は麻痺し、関西着発の幹線輸送へも運行停止などの措置が取られ、 必要物資が届かない地域が北摂地域で見受けられました。
2011年の東日本大震災以降、BCPという言葉が広がり、導入した企業は多くあるかと思います。
ここでは、今回の地震のような自然災害が起きた際の運送事業者にとってのリスク、BCPの点から2つお伝えします。
(1)運送事業者のリスク
第一に考えられるのは、運送サービスが止まることです。2011年の東日本大震災の際に再認識されましたが、トラック輸送は日本の経済、国民生活を支えるライフラインです。
運送サービスが止まるということは、荷主企業にとっては、サプライチェーンの寸断ということになります。
すなわち、荷主企業として事業継続が困難な状況が発生します。具体的に運送サービスがとまる状況とは、道路が寸断、公共交通機関の運転見合わせなどでドライバーや従業員が出社・帰社できない、稼働できる車両がない、荷役機能が使えない、通信が出来ない等のことがリスクとして考えられます。
(2)BCP(事業継続と早期復旧)
運送サービスを止めない、仮に止まってしまったとしても短時間での復旧させる準備が必要です。
そのためにも運送事業者のBCP策定も必要となります。
BCPとは、災害やリスクが発生したときに重要業務の継続と、早期の復旧を可能とするための、平時から事業継続について戦略的に準備しておく計画です。
では、運送事業者がサービスを継続させるためにどのような準備をすべきかをいくつかご説明します。
運送サービスの重要業務として、①受注②運行管理③配送の3つに分けることが出来ます。
緊急事態の際に最優先に復旧させる部分は上記の3つの業務となり、それらが中断するリスクを並べてみます。
(1)従業員の安全確保、車両、燃料、通信手段などは運送サービスを行う上での必要な経営資源が使えないリスク
(2)道路が寸断、通行止め等で配送ルートが使うことが出来ない、車両の水没、破損や給油場所が被災し燃料の調達が出来ない等の業務を中断させるリスク
これらの2つについて、仮に起きた際のシミュレーションとして想像し、リストアップし有事の際に、いかに運送サービスを止めない、止まったとしても、いかに短時間で復旧することができるか?を全体的に整理することが非常に重要となります。
災害の際には実際にシミュレーションした内容が起きるとは限りませんので、事業継続のためのPDCAとして
<P>BCPをつくる <D>意識づけ <C>進捗確認 <A>更新
業務の流れも変更となる可能性もありますし、経営資源や配送ルート、の内容も変わる可能性もあるはずですので、シミュレーションを行い、PDCAを定期的に行う事も必要ではないでしょうか。
BCPをイチから作るとなると、腰が重い企業もあるかと思いますが、手間をかけずに、事前に「リスクを想定した」範囲のものを準備することから始めてみるのはいかがでしょうか。
例えば、経営資源の車両が損傷した際に、運送サービスを止めない為の協力会社の確保や、早急な修理対応が可能な整備業者の手配なども考えられます。
また、車両が損傷していなくても、給油所が被災し、燃料の調達が出来ない場合もあります。
1社に絞ることで使用量を増やし単価を抑えることもできますが、災害の際には、リスクになるため、複数社から調達することも大切なポイントとなります。
また、従業員の安全確保として、連絡先リストの共有を全員に行い災害の際の避難場所、集合場所の設定を行います。
誰が、従業員と連絡を取り合うのかを決めておきます。電話だけでなくSNSを活用する手段も良い方法です。
今回のように北摂地域では地震の後、電話が通じ難くなることもありましたが、ネットには影響がなかったためKDDIがauユーザーに限らず、フリーのWi-FiSPOTを提供していました。
このような情報も今回事例としてありましたので、今後の有事の際には活用すべきでしょう。