第8回 多様性への対応 働きやすい環境の整備
経済産業省の「ダイバーシティ企業経営100選(平成二十六年度)」に日立物流が選出された。物流業界では唯一の選出。素晴らしいことだ。
ダイバーシティー(多様性)とは、企業経営でさまざまな価値観を尊重して受け入れ、積極的に多様な人材を登用し、変化する顧客ニーズに進化を持って対応することを意味する。外国人・女性・障害者など多様な人材の活用が、グローバル化時代の企業戦略では求められる。もとより、物流業界にとって、労働力確保はグローバル化対応以前に待ったなしの状況であり、従業員の多様化は喫緊の課題だと言える。
ドライバー不足は解決の糸口が見えない。物流現場のリフト作業員やピッキングスタッフに関しても、すでに同一地域・異業種間で奪い合いが起こっている。さらに、同業間での待遇比較よりも難題なのは、物流事業よりも収益率が高く雇用条件の良い他産業との争奪戦だ。
これからの国内労働市場は、企業と就労者のマッチングが重視され、そのノウハウによって差別化がされる。安定的に新卒・中途採用が継続できる企業と、常に労働力確保が経営課題となっている企業では、戦う前に結果は見えている。特に多様な人材登用を実現していくためには、採用マネジメント部門と適材適所な配置を行うことに長けた人事マネジメント部門が担う役割は大きい。
物流業界の外国人活用は、何もグローバルに展開しているフォワーダーだけの問題ではない。前述のリフト作業員や仕分け作業員、検品やこん包作業など、物流センターのあらゆる作業工程で外国人スタッフの活躍は期待される。
外国人スタッフの労働力を確保するには、職場環境のパラダイムシフト(劇的な変化)がなくては実現は難しい。物流センター内の表示方法や、各種作業マニュアル・センター内言語の英語化など、ある程度の時間をかけて取り組むべき施策は多い。
また、女性従業員の活用方法についても、十分に検討されているとは思えない。それには労働条件と就労施設の環境整備が絶対条件となる。一つには、短時間パートや変則勤務体系などフレキシブルな労働条件の導入。次に休憩所・更衣室・トイレなど快適な職場環境の整備。これまでの、企業サイドのアセット思想に偏った物流センターでは人が集まらなくなる。
物流業界でのダイバーシティーへの対応は、同質的で排他的な組織の転換が成功の鍵を握る。人が集まらなくて困っている企業幹部は、いま一度自社の職場環境を複眼的に考察してみるべきだ。