物流事故を記録する意義と管理項目
配送費を筆頭に物流コストが上昇傾向にある中、在庫差異や誤出荷の続発など物流オペレーション品質の低下に頭を抱えている企業が多く見受けられます。
一方で、物流オペレーションの品質管理を可視化できていない現場も多く、特に発生した物流事故が記録できていないようです。
今回は自社で物流業務を行っている荷主企業の物流現場責任者が管理すべき「物流事故の記録の必要性」についてお伝えします。
【物流事故】と聞いて、皆様はどのような事故を挙げられるでしょうか。
冒頭の在庫差異や誤出荷をはじめ、商品破損や遅配、残荷などが大きなものとして挙げられます。
このような事故はお客様へご迷惑をおかけする”重大な事故”となります。
”重大な事故”が発生した場合、被害に遭われたお客様から改善・対策を求められることも多いため、すでに記録されている企業も多いかと思います。
しかし、今回はもう1段階下の”軽微な事故”に着眼いただきたいと考えています。
「ハインリッヒの法則」はご存知の方も多いことでしょう。
1つの”重大な事故”の手前には29の”軽微な事故”と300のヒヤリハットが存在する、というものです。
逆に言えば、”重大な事故”は、”軽微な事故”やヒヤリハットを減少させることで防げるということです。
では、物流業務における”軽微な事故”とはどのようなものが挙げられるでしょうか。
“軽微な事故”の代表的なものは「ピッキングミス」です。
ピッキング後、伝票との確認を行う際にミスを発見した場合、そのまま正しい商品を取りにいくという過程を経て、何事もなかったかのように検品を続行する、ということが多いのではないでしょうか。
このように「誤出荷」という重大な事故を防げても、その可能性となる「ピッキングミス」は明らかに現場のルールや保管方法などの改善が必要な事故です。
しかし、作業場で完結する”軽微な事故”は現場管理者の耳まで届かずに埋もれることが多く、”重大な事故”が近づいている足音に気づくことができません。
まず今日から「ピッキングミス」の発生回数を集計されてはいかがでしょうか。
出荷担当の方に再ピックの発生回数をカウントして報告してもらうというルールを一つ設けるだけで実施可能です。
可能であれば、ミスをした作業者、対象のロケーション、商品、形状などの情報も集めてみてください。
偏った結果が出れば、すぐに対処できることでしょう。
他にもピッキング時に発覚した「格納ミス」の記録や、目安箱を設置して作業者からヒヤリハットを集めることも効果的です。
様々な事故を記録することにより、事故と向き合い、常に意識する習慣をつけることが物流現場の管理者に必要なのです。
事故の要因は、作業者の気の緩みが大部分を占めます。
出荷件数の多い繁忙期よりも閑散期の方が事故の発生率・回数が多い現場はたくさんあります。
物流現場の管理者として何を「管理」すべきなのか、または企業としてどのような物流管理者が必要なのか、一度熟考いただく機会となれば幸いです。