第3回 2015年の物流業界時流(3)地方の拠点再配置戦略
物流業界が包含する課題の二つ目は、地方空洞化による拠点再配置施策だ。
この数年、日本の製造業は確実に空洞化している。長きにわたるデフレ経済下で、国内製造業の拠点海外シフトは物流業界へ極めて大きな影響を与えた。
日本の基幹産業である自動車や電機・機械産業などは、東北や九州などの地方へ生産・組立工場を配置し、海外への輸出工場として物流を産み出してきた。それら輸出企業の業務に伴う地方工場発、空港・輸出港への輸送ビジネスが枯渇してきている。大資本による工業製品製造業は、グローバル視点を重視した戦略に基づき、より競争優位となり得る中国やASEAN(東南アジア諸国連合)へ生産拠点をシフトしている。
日本の物流業、特に輸送を主体とする運送事業者は、荷主が進化した地方工場へこぞって同期進出してきた。元来地方に根付いている地場運送業も、負けじと倉庫や物流センターを建築し、外部からのプレッシャーに対抗する。
これまでは、外部資本と地元資本の良好な競争関係が物流市場を活性化し、高品質・低コストの物流サービスが創出され、荷主企業はそれを享受する環境にあった。だが、グローバル競争時代に突入したいまの時代は、国内向け以外の製造業は生き残りが難しくなっている。必然的に、荷主が海外へ工場シフトを実行すればするほど、地方物流の空洞化が顕著に現れる。
地方の地場物流企業・支店営業所の生き残りキーワードは「ラストワンマイル」と「地域共生」。戦略の主軸は「地域密着ナンバーワン戦略」だ。地場の有力企業であっても上場大手物流企業であっても、地方での生き残り戦略は時代の変化に適合させていくことが必要となる。
グローバルビジネスを主体とする荷主企業は、いずれ国内生産から撤退していく。地方に残る生産工場は、食品と地産地消が可能なビジネスモデルを実現している一部の荷主企業となる。
成田・羽田空港、関西空港や東名阪の国際主要港と隣接したマーケットと、地方港や国内輸送を経由しなくてはならないマーケットでは、必然的に戦略もビジネスモデルも違ってくる。過去に進出した倉庫や物流センターなどの地方拠点も、自社の生き残り戦略に基づいた再構築が求められる。
サンクコスト(埋没費用=事業に投下した資金のうち、事業の撤退・縮小を行ったとしても回収できない費用)の呪縛にとらわれることなく、その地域に最適な場所・機能への再投資か、思い切った撤退が今後の経営課題である。