第2回 2015年の物流業界時流(2)社会変化に合った求人戦略

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

 今号から、物流業界が包含する五つの課題・問題点について考察する。

一つ目は、極度のドライバー不足だ。運輸業界のドライバー不足は、いまや都市部だけの現象ではなく、全国レベルで深刻な問題となっている。
 総務省統計局の労働力調査によると、運輸・郵便業は就業者数三百四十一万人(平成二十六年十月)で、前年同月比マイナス〇.六%。この比率だけを見ると、さほど逼迫(ひっぱく)している様子は感じられないが、実際の現場では地場・中長距離にかかわらず慢性的にドライバーが不足しているのが実情だ。中長期的にはドライバーの高齢化も深刻。輸送・機械運転従事者は五十五歳以上が三十八%を占める。五年~十年後には、いま以上の極度なドライバー不足が懸念される。
 問題の主な理由には、中型免許制度の導入や低賃金・長時間労働、職業選択の拡大による影響などが挙げられる。中でもドライバー職に対する求職者の見方が、過去の高賃金長時間労働から、低賃金長時間労働というネガティブイメージへと変化したことが大きな問題点だ。  大手企業は当然、中小・零細企業でもドライバーの長時間労働は改善に向けた動きが興隆しつつある。だが、他産業と比較して低賃金の実態は、収受運賃が底上げされない限り解決しない。内部コストの低減だけでは、限界が見えている。
 ドライバー不足の解決策としては、他社との差別化を図り、競争優位なビジネスモデルを確保できる経営体質へとシフトし、ドライバー職の待遇改善を推進していかなくてはならない。
 従来どおりの採用手法では、ドライバーは集まらない時代。自社の質を高め、職場環境の改善を図り内発的な動機による求人活動を早期に実施する必要がある。
 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を意識し、IT(情報技術)ツールを活用した求人・採用戦略の再構築も、運輸事業者が生き残る上で欠かすことの出来ない施策だ。
 Twitter、FacebookといったSNSは急速に発達・普及し、求職者間での情報連携はリアルタイムに行われる。これにより、運輸各社の評判や評価が誰の目にも容易に見えてしまう。良い評価も悪い評価も瞬時に世界中に知れ渡る。
 そのため、求人・採用戦略で、インターネット、SNS活用は極めて重要な位置づけとなる。IT時代の雇用構造変化に追従できていない現状は、運輸業界の喫緊の経営課題の一つといえる。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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