第32回 物流M&A(11)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

今回は、DCF法による企業価値評価について、プロセスを追って説明していきます。

(1)フリーキャッシュフロー(FCF)を予測する

まず、FCFを計算します。FCFとは、企業が自由に借入金返済や配当支払などに使えるキャッシュです。営業利益から、事業継続に必要なCFを差し引き、また、現金の出入りを伴わない費用を足し戻して計算します。

FCF=税引後営業利益+減価償却費−運転資金増加額−設備投資額

期間は5年とすることが多いようです。事業計画に基づき、1年目から5年目まで、各年度FCFを予測します。

(2)割引率を計算

割引率の根底にある考えは、将来の不確実性に対するリスクである、と説明しましたが、どのように数値で表すのでしょうか。代表的な方法をひとつ、紹介します。

割引率=無リスク金利(A)+期待する利回り(B)×β値(C)

ここで、無リスク金利(A)としては、国債利回りを使います。また、β値(C)とは、個別企業の株価が、市場の影響をどれ程受けやすいかを、統計的に計算した数字です。

公開会社であれば四季報などで調べることができます。

株式投資であれ、買収という形での企業投資であれ、リスクの心配ない金利(A)より、どれだけ高いリターン(B×C)が期待できればその投資に参加するか、という数値が、割引率であるといえます。

(3)FCFを割引率で割り引き、現在価値を計算

割引率を計算できたら、以下の式にあてはめて各年度FCFの現在価値を計算します。

現在価値=N年度FCF×(1/1+割引率)N乗

※注 2年度目に得るFCFを1200万円、割引率7%とした場合:
現在価値=1200万円×(1/1+0.07)2乗=1048万円

こうして計算した各年度の現在価値を合算した値が、企業の事業価値と呼ばれるものです。

(4)事業価値から株式価値を算出

株式価値は、次の式で計算します。

株式価値=事業価値+現金−有利子負債

以上、DCF法の骨子をご説明をしました。良書も多く出版されているので、興味をもたれた方は是非、実際に貴社の数字を当てはめるなどして、企業価値診断をしてみて下さい。

意外にシビアな結果が出るかも知れません。

来週は、DCFを使って簡単なケーススタディをしてみたいと思います。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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