自社単独での輸配送効率化についての考察
わが国の荷主企業の多くは物流コスト削減を目指し、継続的な物流改善に取り組んでおられますが、2005年を境に、売上高対比物流コスト率は下げ止まり傾向にあります。
この背景のひとつは、運送事業者自社単独だけの効率化で、求められる輸配送コストダウンを吸収することが困難になっているからです。
つまり、荷主企業は従来のように運賃削減交渉だけで輸配送コストを削減することが既に限界になってきています。
荷主企業は、輸配送コスト削減を運送事業者だけに依存する形から脱却しなければなりません。
今後は荷主企業が主導権を握った上で運送事業者と一緒になって輸配送の効率化を実施していく必要性があるのではないでしょうか。
これから強化していくべき事項としては、当然のことながら輸配送の共同化が考えられますが、今回はあえて自社単独での徹底した輸配送効率化の取り組みによる物流コスト削減ついて考察していきたいと思います。
その理由は、徹底した輸配送の効率化は、共同化の成功に必要な条件の一つであり、共同化の輸配送を取り組み前であっても損はないと考えているからです。
輸配送の効率化は、①積載率②実車率③回転率に分解できます。
ただ、距離別には輸配送効率化を図るために取り組むべき重点事項は変わります。
輸配送の効率化を実現できれば運送事業者は「生産性」を向上することができます。
生産性の向上は、労働時間の短縮と賃金アップの二律背反を克服してドライバーを確保するという効果もあります。
そこで「生産性」の向上を目指して輸配送の効率化を実現するためには、具体的に「積込」や「納品」の各工程においてムリ・ムダ・ムラが発生していないかをまずは分析することが良いと考えています。
■「積込」においては、全体最適化の観点から業務改善を取り組むことが必要だと考えます。
積込作業を効率化するには、①完成製品が見つけやすい状態で管理されていること②全体的な状況を把握して出荷作業と配達車両との効率的な連携を図ること、が必要となります。
その結果、積込時間の短縮化を実現することができます。
加えて、配車計画と現場の稼働状況を適時に組み合わすことができれば、全体的な「稼働率」のさらなる向上につながります③製品の完成待ちや積込時のリフト使用の待機時間を発生させないことで、ドライバーの稼働時間を本来の積込時間に使うことができ、労働時間の短縮にも繋がります。
その結果としてドライバーの確保にも効果はあると思われます。
■「納品」においては、実際の納品作業時間を測定することが必要だと考えます。荷卸形態はどのようになっているか。
荷卸作業の前後に待機時間は発生していないか。
納品時間の指定がある場合には、納品業務にどれだけの負荷がかかっているのかなどを把握する必要があります。
つまり「納品」においては、作業内容の標準化が図れていることや納品時の制約条件が少ないことが、「稼動率」向上の観点からも望ましいと考えています。
以上のように、「積込」と「納品」の工程においてムリ・ムダ・ムラをなくしていくことは、車両「稼動率」を向上することになります。
その効果として、繁忙期においても増大した物量に応じた対応をすることも可能になります。
また、昨今の労働力不足や車両不足の問題についても対処することがでます。
従来の対処方法としては、物量(販売量)が増加した場合は、車両台数を増加させる形で対応する荷主企業は多かったように思われます。
今後の対処方法としては、物量が10%増加すると車両を10%増加させるのではなく、稼動率を10%向上させ、物量の10%増加にも対応することを目指すべきではないでしょうか。
つまり、積載効率を向上させることで輸配送の効率をあげることができ、結果としてトータルな輸配送コストも削減することが可能となります。
荷主企業は、輸配送の体制とその運営する方法が重要になります。
そして車両稼働率を向上させることは、安定的な供給責任を継続的に果たすことにもなります。
最後に、稼働率を向上させるためには、まずは輸配送の効率化のための輸配送計画を策定することをおすすめします。
そこで、輸配送管理部門を強化することで輸配送業務の各工程の「積込」と「納品」別に分けて可視化することに時間をかけるべきではないでしょうか。
そして、荷主企業主導でコントロールできる体制を構築して、運送事業者と意思疎通を図りながら輸配送管理を実行することが必要だと考えています。
このあたりのことは、中堅中小企業だけではなく数百億円規模の企業においても課題となっていることが多く、今後の荷主企業と運送事業者が共存共栄するために必要な取り組みだと考えます。
これから輸配送管理にかかる適正な間接コストは、荷主企業にとって戦略物流の観点から必要経費になってくるものだと考えています。
そのような取り組みの中で、トータルな輸配送コスト削減を目指すことに取り組んでみられてはいかがでしょうか。