第31回 物流M&A(10)
これまで、M&Aに際してどのように企業価値を計算するかについて、
1.純資産による評価(アセット・アプローチ)
2.株価による時価評価(マーケット・アプローチ)
と、2つの方法を紹介しました。
これらはいずれも、ある企業について、その実績の集積を、ある『時点(ストック)』の状態で捉えた概念です。
新倉庫への投資であっても、企業の買収であっても、そのプロジェクトに採算がとれるかどうかの判断には、『時間(フロー)』の概念が必要です。
判り易く言い換えると、今日の1万円と1年後の1万円では、当然、今日の1万円のほうが価値が高くなります。
タンスにしまいこまない限り、お金は様々な機会を通じて、さらにお金を産み出すからです。時はカネなり、お金には時間的価値があります。
この考え方を、プロジェクトなりビジネスが、1年後、2年後・・と、将来産み出すであろう収益の評価に取り入れて、より適正な企業価値へと近づけるのです。
では、現在と将来という、異なる時点をどう比較すればいいのでしょうか?
そこで利用される方法が、『DCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー、割引キャッシュフロー)』と呼ばれるものです。ここで、将来のキャッシュフローを現在の価値に換算するための調整率を、『割引率』といいます。
割引計算をしてみましょう。
ある企業が、1年後に1500万円のキャッシュフローを生み出すとします。
割引率は7%と仮定します。
このとき、
1500万円÷(1+0.07)=1401.8万円
となります。
1年後の1500万円は、現在の1400万円程の価値しかないということです。
1年という時間があるため、その間のリスクやコストを勘案した結果といえます。
ここでいうリスクやコストこそ、割引率を何%と仮定するかについての根拠となります。
次回は、具体的な割引率の算出方法と、DCF法をどう企業価値評価に応用するか、ご説明します。