第56回 物流子会社の彷徨(6)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

荷主企業と物流企業とは、利益相反の関係にあります。

それぞれが満足する結果とは、一時的な関係であり、コストを下げたい荷主 企業と、物流サービスの請負によって利益を創出したい物流企業には、 相対価値の歪みがあり、どちらの視点がより歪みを感じているかによって その関係における満足度に温度差を生じます。

親会社と100%親会社の仕事のみを請負っている物流子会社は、同じ 価値を共有し、その活動成果も同調されます。

しかし、一般の荷主と物流会社 ではある一定のところまでは、双方のベクトルが一致しますが、安定化が始まる と荷主はコストダウンを求め、物流企業は料金改定(値上げ)を求めます。

至極当然の事ではありますが、この両者の関係にはシーソーのような見えない Barがあり、長くは水平を保てない相関関係となります。

コンペや同業他社との競りに勝って受注した新規案件は、結果的には 料金競争に打ち勝った案件が多く、受注時より利益を出しずらいものだった と推測されます。

また、現状把握の甘さによって発生した「こんなの聞いていないよ!」が 幾多も現場を混乱させ、想定外の費用を発生させた事例も多いのではないで しょうか。

上層部からの強い外販獲得指令は、経験の少ない営業開発メンバーにとって、 相当なプレッシャーとなり、適切なコスト分析や現状業務フローの解析にあまり多くの時間をかける事ができず、受注のみに向かって邁進する結果を もたらしたものと、思われます。

更に、変動料金が流行となりCVSや量販系の物流センターは多くが 「フィー建て料金」を適用し、荷主側に有利な時代背景もありました。

規模の拡大戦略が利益率の低下を招き、輝かしいはずの外販獲得が 「不採算の根源」と見られたのは、つい最近の事例です。

この視点を持った 親会社は、物流戦略の大転換を行い「外販縮小施策」を選びました。

また、ある親会社は「物流子会社の切離し」を選択し売却へと進みました。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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